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「人をこの世から消す、その点においては、私も殺された男と変わらないのかもしれない」
不意に、玉川が言った。
言葉とは裏腹に、ぎらついた顔をしている。
「そんなことはありません。玉川社長は崇高な理想のために生きていらっしゃるのですから。
ちっぽけな復讐心から人殺しをするチンピラとは違いますよ」
「崇高な理想ですか。
たしかに、私は理想を持っている。だが、その理想のために働くと、ストレスもたまる。
それを解消しなければ前には進めない。そのためには、哀れな羊たちに犠牲になってもらわねばなりません。
しかし、それは当然のことです」
「私も尽力いたしますよ」
杉尾は嬉しそうな笑みを浮かべた。
部屋のドアがノックされた。
玉川が返事をすると、先程杉尾を案内した女が入ってきた。
すると、それが合図のように杉尾が立ち上がった。




