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「こんなに?」
紙袋を上から覗き込んだ杉尾の声は、不自然に上ずっていた。
札束の1つを持った途端、手が震えた。
しかも、札束は紙袋に大量に詰め込まれている。
「ヤツが死んでいなければ、私もまだ病院に隠れていましたよ。
いや、病院でも安心できないか。
なにせ、1人はホテルの部屋で殺されてますからね」
玉川は苦笑いを受かべた。
「どうか受け取って下さい。
私の命がかかってましたからね。
死んだら元も子もありません。
そして、これからも宜しく頼みますよ。
今回ヤツを葬ったならず者ばかりでなく、どんどん海外から人を入れていきますから。
偽造されたパスポートや免許証が横行することになるでしょう」
玉川は頭を下げた。
「わかっております。
全力で、便宜を図らせていただきます」
杉尾も頭を下げた。
「金が必要なら、いつでも言ってください。
出来る限り融通しますから」
「はい、その時は」
2人は手にしたグラスに口をつけた。




