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「私も玉川社長に動画を見せていただいた時には、わが目を疑いました。
本当にこんなことが起きるのか、とね。
一連の事件を見ていると、どういう理屈かはわかりませんが、ヤツが描いた生物が絵から抜け出し、本物の生物になって人を殺していたということですね。私もいまだに信じられませんが。
大勢の人が殺されてしまった。だが、それも終わりです」
杉尾は緊張が解けたように笑みを浮かべた。
「殺された連中は、みな例の件に関わっていた者ばかりだ。
その、桐原とかいうヤツは、我々のことを調べ上げ、一人づつ殺していったのでしょう。
私が殺されるのも時間の問題だった。
本当にたすかりましたよ。あなたは命の恩人だ」
玉川は、杉尾の手を両手で握りしめた。
その後、脇に置かれてあったアタッシュケースの鍵を開け、現金の束を取り出すと、無造作に紙袋に詰め込んだ。
杉尾はその様子を凝視し、唾を呑み込んだ。
「ささやかですが、これは今回の件の謝礼です」
玉川はテーブルの上に置いた紙袋を、スッと杉尾の方に滑らせた。
中の現金は、目測でも3千万は下らないように見えた。




