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その日の午後、啓示社に里奈が出社してきた。
編集部では徳丸一人を除き、みなが心配そうに出迎えた。
「里奈ちゃん、あんなことになって大変だったね。
大丈夫?しばらく休んでいいって、伝えた、んだよな?」
デスクの神田は行橋に顔を向けた。
「ええ、連絡しましたよ。しばらく休んでいいからって」
行橋が答えた。
「ほら、無理しなくていいよ。社長にも許可もらってるし。
5日でも1週間でも休んでていいから。
精神的なショックって、自覚してないこともあるからね。
仕事の方は、みなでカバーするし、あとで挽回できるから」
神田の言葉に、里奈は数度首を横に振った。
「私、決めました」
「え?」
「私、決めたんです」
里奈の口元は、決意の強さを表すように固く結ばれていた。




