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「あのカメラマンの女性に泣きながら言われました。
警察に知らせなかったら、死なずに済んだんじゃないかって。
それがつらくて、苦しくて」
白井はうなだれた。
「仕方なかった、仕方なかったんだよ。
そういえば、容疑者は外国人だそうだな」
「はい、アジア系の男です。
後から情報を教えてもらったのですが、気が抜けてしまっていて、ほとんど憶えていないんです」
「俺が聞いたところでは、殺した動機もムシャクシャしてたとか、幻覚が見えてたとか、二転三転してるそうだ。
ズボンのポケットからは覚せい剤が出てきた。
今回の件は、薬物中毒による突発的な犯行ということで片づけられるようだ」
「そんな・・・・・・。
あいつを待ってる車が止まってたんですよ。
組織的で計画的な犯行に決まってます。
それは書類にも書いたのに」
「握りつぶされた、か。
あっち、大阪で聞いたんだが、犯罪歴のある外国人がどんどん日本に入ってるらしい。
そいつらに巨額の報酬で仕事を頼む連中がいるそうだ。
殺人を一件こなせば、一生遊んで暮らせる金が手に入るし、バックの組織にも金が入る。
たとえ今回みてえに捕まってもムショで何年か過ごせば、国に帰って成金生活ってわけだ」
「そんなの、やりきれませんよ、こっちは」
「今度の事件はその線で間違いないだろう。
あの桐原って男が、どうして殺されたかはわからんが」
「命を狙われる理由があったってことですね。
多額の報酬を払ってでも」
白井は大きなため息をついた。




