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「犯人を頼みます」
白井は大声で篠原に伝えると、すぐに走り出した。
白井に撃たれた男は、うつぶせのまま苦しげな声を上げている。
篠原は、その背に馬乗りになった。
男のふくらはぎから、かなりの血が流れている。
「ふざけた真似しやがって!」
篠原は男の片腕をねじ上げると、手錠をかけた。
男は呻きながら何事か喋っているが、篠原には何を言っているのか、わからない。
白井が戻ると、黒づくめの男は仰向けに倒れており、両膝を着いた里奈が、その場に寄り添っている。
白井は、あらためて事の重大さを突きつけられた。
「救急車、誰か、もう救急車は呼びましたか!」
叫んだ白井は、自身でも電話をかけていた。
「桐原さん、桐原さん」
叫ぶ里奈の目から涙がこぼれ落ちていく。
だが、男は目を閉じたまま動かない。
「こんなことに、こんなことになるなんて、ごめんなさい」
里奈は、大声で泣きわめいた。
電話をかけ終えた白井は、里奈のすぐ側でひざを着いた。
しかし、里奈にかける言葉は見つからなかった。




