218/341
217
「あっ」
白井の口から声が漏れた。
篠原が白井に何の連絡もなく、男に向かって歩いていく。
大柄な上、動作も大きいため、やけに目立つ。
篠原がまったく予期せぬ行動をとったため、白井の思考は一瞬停止した。
篠原がもう少しで男に接触しようかという時、男は不意に血相を変え、バッグも放り出し走り出した。
やばい、逃げられる!
白井はすぐに走り出した。
篠原も大声を上げ、男を追い始めた。
突然、女性の悲鳴が聞こえた。
続いて、どよめきが起きた。
白井は、走りながら、ちらと横目でそちらを見た。
辺りが騒然とし、パニックで逃げ出す人と、立ちすくむ人とがいる。
その先に、里奈の姿があった。
だが、それだけではない。
里奈の首には、背後から何者かの片腕が回されている。
里奈の顔は恐怖のあまり引きつっていた。
里奈の後ろにいるのは、白井がまったくマークしていなかった男で、黒のTシャツにデニムパンツ、靴はスニーカーを履いており、もう一方の手には、刀身が長めの山刀のようなナイフを握っていた。




