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「どうも、イタズラ電話だったらしい。
まったく人騒がせなことだ。
いや、君たちにはだいぶ手間を取らせたな。すまない」
杉尾は、座ったまま軽く頭を下げた。
「頭をお上げください。
われわれはただ任務を遂行しただけですから」
堀田は、穏やかな声で言った。
「この後は、これまで通り捜査に尽力してくれ」
「はい」
堀田は答えると、杉尾に頭を下げた。
一方、白井は何か言いたげだったが、堀田は気づかれぬよう白井の袖を引いて、ともに署長室を出た。
2人が部屋に戻った時には、遅い時間だったこともあってか、他には誰も居なかった。
「一体どうなってるんですか?
自分で言っておいて、こっちが報告を上げたら、もういいだなんて。
馬鹿にするにもほどがあります。
こんなの、やってられませんよ」
自分の席に戻った白井は、思い切り机を叩いた。
普段おとなしい白井には珍しいことだった。
「まあ、落ち着け。
どうせ、あの子が男と会う日には俺たちも行くことになるんだから」
堀田は白井をなだめると、その場を後にした。




