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「その方とはどういう経緯で知り合ったんですか?」
堀田が少し間を置き、尋ねた。
「もう、何も話したくありません」
里奈はうつむいたままだった。
「さっきも言いましたが、警察に電話がありましてね、殺人を犯しているのは絵描きだというんです。
匿名の電話だから嘘かもしれないし、その可能性は高いと思う。
ただ、警察としても無視するわけにはいかないんですよ。教えていただけませんか」
堀田が話している間、里奈は顔を上げようとはしなかった。
「人が死んでるんです。
我々も死に物狂いで駆けずり回ってます。これ以上事件が起こらないようにね。
その方だけでなく、調べなければならない人間はまだまだいるでしょう。
その方が事件と関係ないとわかれば、捜査対象から外して他の人を調べることが出来る。
あなたは事件の目撃者でもあるんです。ご理解いただけませんか?
どうか、お願いします」
堀田は里奈に頭を下げた。
横に座る白井も同様に頭を下げた。




