208/341
207
「その方の名前も連絡先もご存じなんですか?」
白井が聞いた。
「はい。でも、言えません」
「どうしてですか?」
「プライベートなことなので・・・・・・」
里奈は、胸の前で両腕を組み、うつむいた。
「何がプライベートだよ、生意気な」
徳丸がからかうように言った。
「里奈さん、それを我々に教えてもらうわけにはいきませんかね?」
堀田が尋ねた。
里奈はまだ、腕を組んだままうつむいている。
そのまま、沈黙の時間が流れた。
少し経ってから、里奈はようやく顔を上げた。
目が潤み、虚ろな表情を浮かべている。
「どうして警察は彼のことを知りたがっているんですか?」
「実は、警察に匿名の電話があってね。
今回の一連の殺人事件の容疑者が、絵描きだというんだ。それで」
「彼はそんな人じゃありません!」
堀田が言い終わらないうちに、里奈が強い口調で言い放った。
堀田も白井もかなり驚いた様子である。
里奈は、再びうつむいた。




