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「港で大きなサメを見たんです。それを写真に撮りました。本物の泳いでるサメはちゃんと写ってたんです。で、その場にサメの絵を描いている人がいて、それがあまりにも上手かったから、その絵をこっそり写真に撮ったんです。
でも、現像してみると写ってなくて」
里奈がそこまで話すと、徳丸が横から口をはさんだ。
「あのサメはでかかったっすね。ホオジロザメですよ。
あんなところで見れるなんて信じられないっす。
映画の『ジョーズ』って知ってますよね。あれに出てくるサメがホオジロザメですよ。でも、イタチザメとかオオメジロザメなんかも危険なんですよ。もっとも、そいつらが生息してるのは、もっとあったかい海ですけどね」
「ちょっと静かにしててくれ」
堀田に言われ、徳丸は黙り込んだ。
堀田は、再び里奈に顔を向けた。
「その絵を描いていた人のことを詳しく教えてください。
男性、ですか?」
「あ、はい」
里奈は戸惑い気味に答えた。
「年はいくつぐらいですか?」
「30ぐらいだと思うんですけど、はっきりとは・・・・・・」
「身長とか、服装は?」
堀田がそこまで尋ねると、里奈は不審な目を向けた。
「あの、どうしてそんなこと聞くんですか?
その人が事件と関係があるんですか?」
「いや、そういうわけではないんですが、こちらとしても一応伺っておきたかったもので」
堀田は歯切れ悪く言った。




