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「そうなのか?」
堀田は徳丸を見た。
「ああ、そういえば。
確かに、あのでかい屋敷の外に居た時、オウギワシを見ましたね。
それに、写真を撮れ、とも言いました」
「その写真はあるか?」
堀田は前のめりになって尋ねた。
「私、探してきます」
里奈はすぐに立ち上がると、部屋を出て編集室に向かった。
里奈が自分の机の引き出しを開けると、写真の束があった。
里奈は、それをパラパラとめくり、数枚を取り出した。
「一応、これだと思うんですけど」
部屋に戻った里奈は歯切れ悪くそう言うと、テーブルの上に写真を数点置いた。
そこに写っているのは、高い塀とその上にある真夏の空だけだった。
オウギワシはおろか、他には何も写っていなかった。




