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「ああ、オウギワシってのは、中南米に生息する鷲でしてね、けっこう大きくて、少し前に日本で初めて御徒町動物園に来たんですけど、なんやかんや忙しくて、まだ見てないんですよね」
徳丸は、得意げにしゃべりだした。
「生息する地域では、森の中を滑空して、木の枝につかまっているナマケモノなんかをかっさらって餌にしたりしてるんですよ。
脚や爪もごつくてですね。鳥なのに握力も百数十キロあるとかって」
なおも徳丸は話し続けるが、堀田も白井もまったく聞いていない。
「その何とかというワシが写真には写っていなかったというんですね?」
「はい。私、徳丸先輩と林の中に居た時、先輩に言われてオウギワシの写真を何枚も撮ったんです。
でも、一枚も写ってなかったんです。間違いなく撮ったはずなのに。
おかげで先輩に怒られて、会社からもサボったって怒られて」
里奈は、徳丸を横目で見た。
「おまえ、何余計なこと言ってんだ!」
徳丸は里奈を叩こうとした。
里奈は、手でどうにかそれを防いだ。
「だって、ひどいじゃないですか。
本当は事件の現場に行かなくちゃならないのに、先輩のサボリに付き合わされたんだからあ」
「カメラの腕がヘボいのを人のせいにしてんじゃねえよ、ガキのくせに生意気な」
徳丸と里奈は、2人の刑事が見ている前で言い争いを始めた。




