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「はあー、あち、あちぃー」
徳丸はネクタイをゆるめ、片手で首筋をあおぎながら、里奈の横のソファーにどっかりと座った。
汗がこめかみから滝のように流れ、首筋もだいぶ濡れている。
里奈は徳丸を気にする様子も無く、じっと写真を見ていた。
「はい。サメが見えていました。
この人が襲われて沈んでプールが血で赤くなった後も、背びれはプールを動き回っていました。すごく怖かったです」
「サメだあ?まだ、そんなこと言ってるのか!
おまえなあ、もう少しましなウソつけねえのかよ」
里奈が話し終えないうちに、徳丸が声を上げた。
「黙っててくれないか、今は彼女に話を聞いてるんだ」
堀田が声を荒げると、徳丸は静かになった。
「失礼。それで里奈さん、あなたはあの時、あの場で写真を撮った。
それは事実で間違いない。しかし、あなたが見たというサメは写真に写っていない。
本当にサメがあのプールに居たのなら、どうして写真に写らなかったと思いますか?」
「それは・・・・・・」
里奈はうつむいた。




