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堀田は前かがみになり、写真の男の視線の先を指差した。
「被害者は、何かに怯えた顔をしているように見えます。
しかし、この写真にはそんなものは見えない。
以前と同じことを聞きます。
あなたが見たのは、この写真と同じ情景だったのか、それとも、ここには写っていない別の何かが見えていたのか、教えてもらえますか?」
堀田は視線を上げ、里奈の顔を見た。
あどけない顔の少女は、まじまじと写真を見ている。
「ここには写っていないものを私は見ました」
「それは何ですか?」
「サメ、です」
一瞬の沈黙の後、里奈は答えた。
さらに、
「大きかったです、かなり」
そう付け加えた。
「ありがとうございます。
他の写真も男が何かに怯えていたり、襲われているように見えますが、それもサメだということですね?」
堀田がそこまで言った時、
「すんません、すんません、今着きましたー」
大きな声がして、部屋のドアが無造作に開けられた。
徳丸が勢いよく部屋に入ってきた。
堀田と白井は顔をしかめたが、里奈はなおも、写真を凝視していた。




