195/341
194
3日が過ぎた。
里奈はすっかり立ち直ったわけではなかったが、時間の経過とともにだいぶ気も紛れてきていた。
この日、里奈が勤めている出版社の啓示社を刑事の堀田と白井が訪れることになっていた。
前日、堀田は徳丸と里奈に再度話をうかがいたいと電話で伝えていた。
2人の刑事は、10時過ぎに啓示社を訪れた。
だが、徳丸はまだ出社していなかった。
「こちらから事情聴取をお願いしたとはいえ、すっぽかすとは大した度胸ですね」
堀田が苦笑いを受かべ言った。
出迎えたデスクの神田と行橋も心苦しそうに笑った。
「徳丸はいつも出社が遅いもので、申しわけございません。じきに来るとは思うのですが」
「まさか、彼が犯人ということはないでしょうな」
そう言いつつも、堀田の顔は笑っていた。
「多分、昨日の晩にキャバクラか風俗に行ったんでしょう」
行橋が言うと、堀田だけでなく白井も笑い出した。
笑いが収まったところで、
「徳ちゃんがいないなら、先にそちらのお嬢さんを」
堀田はそう言うと、立っている里奈に顔を向けた。




