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里奈は男の手を握ると振り返りもせず、夢中で走った。
途中、下り坂に差しかかると、バタバタと駆け下りた。
2人の歩幅が違うので、手を握ったままの里奈は、男と速度を合わせるのに苦労した。
「もう、この辺でいいでしょう」
男の声で、里奈は足を止めた。
見ると、男は激しく息をしていた。
里奈自身も息が苦しく、立っているのがやっとの状態だった。
2人は、白い丸テーブルとイスがいくつも置かれている広場に来ていた。
「勝手にこんなことして、私」
「どうもありがとう」
里奈が言い終わらないうちに、男が言った。
かなり汗をかいていた。




