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数頭いるホッキョクグマは暑さのため、ぐったりと寝そべっているが、時折、囲いの中にあるプールに入り、泳いだりもしている。
もともとがそういう環境で暮らしているためか、泳ぐ姿はとても自然なものに見えた。
ホッキョクグマのブースは、クマ自体が白いのはもちろん、背景も極寒の北極の地をあしらって白く塗られており、見ているだけで、いくらか涼しくなるように感じられた。
男は真剣な眼差しでクマを見つめると、キャンバスに向かい、描き始めた。
声をかけるのもはばかられる緊張感から、里奈は男から少し距離をとって立っていた。
男が描いていくにつれ、キャンバスの上には、まるで生きているかのようなホッキョクグマが現れてきた。
キャンバスには、2頭のホッキョクグマを描かれている。
親子なのか、カップルなのか、ライバルなのか、2頭の関係性はわからないが、絵であるにもかかわらず、圧倒的な存在感があった。
「やっぱり凄い。この人、天才だわ」
里奈は、男の顔とキャンバスの絵とを交互に見つめた。




