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「動物園、そうか」
見ると、男はゲート横のチケット売り場に並んでいた。
すでに、男の後ろには数人が立っている。里奈は慌てて列の最後尾に並んだ。
「今月厳しいなあ」
取り出した財布の中身を見た里奈の口から、言葉が漏れた。
すると、一枚の紙が横から差し出された。
動物園の入場チケットだった。
「へ?」
里奈は顔を上げた。
「あなたの分も買っておきましたから」
そう言うと男は、戸惑う里奈の手にチケットを渡した。
「ど、どうも」
里奈はうつむいたまま言ったが、すぐに顔を上げ、
「ありがとうございますっ」
そう言って頭を下げた。
「そんな、気にしないでください」
男はゲートを通り、園内に入った。
里奈もその後に続いた。




