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2人がデパートを出ると、外はさらに暑くなっていた。
里奈は男のすぐ横に並んで歩いている。
気持ちが高揚し、宙に浮かんでいる気がした。
「いい絵描けました?」
里奈は、男の顔を覗きこんだ。
「ええ。それなりにですけど」
男の顔が、里奈には満足げに見えた。
「それは良かったですね」
近寄りがたいと思っていた男が、身近に感じられる。
「今度はどこへ?」
里奈は歩きながら尋ねた。
「内緒です」
「そうなんですね。どこだろう?」
里奈は、顔に笑みが浮かぶのがわかった。
これには、自分自身が驚いていた。
男は歩いている間、何も話さなかった。
里奈も黙ってついていくのだが、それで不安になることも無い。
ただ、履きなれない靴だったため、ついていくのが大変で、それを悟られないようにするのも骨が折れた。
男は道を曲がると大きな公園に入り、その中を進んで行った。
「少し休みたいなー」
里奈がそう思った時、前方にゲートが見えてきた。
上部の看板には、『御徒町動物園』と表記されてあった。




