178/341
177
表示には、『ボア・コンストリクター』と書かれてあった。
男は立ったまま、じっとその蛇を眺めている。
「大きいですね」
里奈は、横から声をかけた。
50㎝ほど、微妙な距離をおいて立っていた。
なぜか、それ以上近づいてはいけない気がした。
「そうでもないですよ。人々が見たいのは、もっと大きな蛇でしょう。綺麗ではありますが」
「たしかに綺麗ですね、模様が」
里奈は中腰になり、蛇を撮った。
ベージュの下地に、黒、白、茶が幾何学模様を織りなしているように見える。
恐ろしげな蛇を見ているというのに、里奈は宝石を思い浮かべた。
なんとなく返事をしたが、見ているうちに、この蛇が本当に美しいと思えてきた。




