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それは、大きな老舗のデパートだった。
男から30秒ほど遅れて入口に駆け込んだ里奈は、息を切らせながらフロアを見渡した。
だが、男の姿は無かった。
里奈は、落ち着きなく視線を動かし、店内を進んだ。
デパートの一階は化粧品や宝飾品の有名ブランドが入り、普段の里奈とはまったく縁の無い空間だった。
「あっ」
里奈の斜め前方に、男の姿を見つけた。
他の客たちとともにエレベーターに乗り込むところだった。
里奈も慌ててそちらに向かった。
「あ・・・・・・」
エレベーターのドアは、里奈が乗る寸前で閉じてしまった。
「んもう」
里奈は息を切らせながら、エレベーターのランプを見上げると、階を上がるたびに長い時間止まっていた。
「どの階で降りたの?これじゃ、わかんないよ」
里奈は、待ちきれずにエスカレーターへと移動し、6階まで駆け上がると、フロアをくまなく見て回った。
そのまま一階づつ上がり、探し回ったが、どのフロアにも男の姿は無かった。
里奈はとうとう最上階までやってきた。




