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街に繰り出してみると、ここのところの暑さもあり、薄手の服に身を包んでいる人が目につく。露出の大きなファッションの女性も珍しくない。
里奈はいつの間にか、そんな人たちを、自分だったらどう写真に撮ろうかと考えながら歩いていることに気づき、少し驚いた。
かつては、そんな風に街の人々を見ることなど皆無だった。
そのまま、きょろきょろと辺りを見ながら歩いていた里奈の足が止まった。
そこは、とあるブティックの前だった。
高級ブランドや、おしゃれにうるさい女子が利用するような店ではなかったが、スーパーかファストファッションの店でしか服を買ったことの無い里奈には、まったく縁の無いタイプの場所だった。
里奈の視線は、あるものに釘付けになった。
意外なことに、それはブティックのショーウインドーに映った里奈自身だった。
着ている服も、そして髪型も流行りのものではないけれど、映し出された自身の姿は、意外にも被写体として可愛いらしく思われた。
里奈は、嬉しくなった。
こんな気持ちになるのは、もしかすると初めてかもしれない。
これまでの自分の行動パターンを考えると、目の前の店はかなり敷居が高かったが、とりあえず入ってみようと思った。
里奈は、入り口のドアに手をかけた。
その時、里奈が映っている店のガラスに、別の人物が映った。




