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堀田は里奈に目を向けた。
里奈はまだ、うつむいていた。
「この写真を撮った時、あなたの目には何が見えていたのかな?
この写真のように、被害者は何か見えないものに襲われていたのですか」
堀田の問いに、里奈は首を横に振った。
「その写真を撮った時、私には、その写真に写っていないものが見えていました。どうして写っていないのか、それはわからないけど」
「それは、何です」
「それは・・・・・・」
里奈は言葉を発しようとしたが、口をつぐんだ。
「かまわない。あなたが見たままを教えてください」
堀田に促され、里奈は少しだけ顔を上げた。
「サメ、です」
尻すぼみの声で言うと、里奈は再びうつむいた。
「おまえ、まだ、そんなことを」
徳丸が怒鳴りつけた。
里奈は「ヒッ」と小さな声を出し、肩をすぼめた。
だが、
「大事な話をしてるんだ。口を挟まないでくれ」
堀田が一喝すると、徳丸は黙り込んだ。
堀田はあらためて里奈に向き直った。
「詳しく話してもらえるかね、あなたが見たまんまを」
里奈は、徳丸に肩車された時に見たことを話し始めた。
堀田は不審な表情を受かべながらも何度も相槌を打ち、それを聞いた。
白井は、里奈の話を一言も聞き漏らさぬよう、懸命に手帳に書き写していた。




