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雑誌社に戻った徳丸と里奈は、この日の惨殺事件を写したネガを現像室に届けると、それぞれの机に戻った。
しばらくして、編集部に現像された写真が持ち込まれた。
徳丸は写真の束を乱暴に受け取るや否や、
「なんじゃ、こりゃ」
そう、声を上げた。
ボーッと座っていた里奈は、すぐさま徳丸のもとに行き、横から写真を覗きこんだ。
それを見た里奈は言葉を失い、呆然としたまま一枚の写真を手に取った。
そこには、プールで溺れかけている被害者の姿が写っていた。
だが、他には水上に浮かんでいるマット以外、何も写っていない。
慌てて、他の写真も見た。
しかし、それらも同様で、被害者が水中の何かに襲われているように見えるのだが、肝心のその何かが写っていない。
「里奈、おまえが本当に見たのは、一体何だったんだ?」
ずっと写真を見ていた徳丸が顔を上げ、じっと里奈を見た。
「サメ・・・・・・、です。信じてもらえないかもしれないけど、本当なんです」
里奈はおそるおそる言った。
「これを警察に見せるのか、何て言われるかな」
徳丸はイラついた様子で、後頭部を片手で掻いた。




