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徳丸と里奈は堀田に案内され、屋敷の中のプールサイドへとやって来た。
水面には、まだおびただしい血が浮かんでいた。
「ウッ・・・・・・」
突然、里奈がプールに背を向け、口元を手で押さえ、しゃがみこんだ。先程の凄惨な有様を思い出したのに加え、強烈な血の臭いのために、吐き気を覚えたのだった。
「で、どんな感じなんです?警察としては?」
徳丸は、里奈を気遣う素振りを少しも見せず、横にいる堀田に聞いた。
「いやあ、わからんよ、まったく。ただ・・・・・・」
「ただ、何です?」
「何か、巨大な生物に喰いちぎられたような跡が死体にはある」
「喰いちぎられたような跡・・・・・・、それも水中で・・・・・・」
徳丸はあごに手を当て、首を傾けた。
「三十年この世界にいるが、こんな事件は初めてだ。
わけがわからんよ。こんなのばっかりだ、ここ数日は」
堀田はお手上げだというように、大きなため息をついた。
「ワニはでかくなりますがね。アフリカのナイルワニで7m。東南アジアやオーストラリアのイリエワニは、最大で10mに達するとも言われてますよ」




