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「なんだと、この野郎!」
怒鳴り声を上げた篠原は、徳丸に掴みかからんばかりの勢いだった。
里奈はよろけるように後退したが、徳丸は微動だにせず、里奈の腕をつかんだ。
「こっちはこれで飯食ってるもんでね」
徳丸はもう一方の手で、里奈が首から下げているカメラを手にして言った。
「ふざけるな!こっちは警察だぞ」
「まあ、待て」
堀田が篠原を諫めた。
「何とか見せてはもらえんだろうか。何か別のことで融通しようじゃないか」
「だったら、この場で交換条件といきましょうか」
「交換条件?」
「現場に入れてもらえませんかね。そうしてくれたら、写真をお見せしますよ。古いカメラなんで、現像した後にですけどね」
徳丸は得意げに言った。
2人の刑事は顔を見合わせた。




