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「何だ、おまえらは!
どっから入った!」
篠原は感情むき出しで、徳丸と里奈に詰め寄った。
里奈は思わず目をつぶって下を向いたが、徳丸はまったく怯まなかった。
「こういう者です」
徳丸は篠原に名刺を差し出した。
篠原は名刺を受け取ったが、一瞥すると、
「たとえ記者だろうが、事件の現場に立ち入れるわけねえだろう。
常識だぞ、そんなことは」
そう言って、名刺を破り捨てた。
里奈は怖くなり、うつむいたまま震えだした。
篠原は、徳丸の前に立つと、胸ぐらをつかもうとした。
「まあまあ」
不意に、篠原の背後から声がした。
堀田だった。
堀田は少し前からそこに居たが、篠原の体があまりにもでかすぎるため、すっかり隠れてしまっていた。
「徳ちゃん、今回はひとまず出てってくれ。
後でウチの広報から説明があるから」
堀田は穏やかに言った。
「どうしてもダメですかねえ?
現場を見てみたいんですけど」
徳丸は上目遣いに堀田を見た。




