139/341
138
数時間後、開け放たれた屋敷の門には、関係者以外の立ち入りを禁止するテープが貼られていた。
入口には数名の警官が立ち、門のすぐ外にはマスコミ関連の人だかりが出来ていた。
その脇で、ひそひそと話している者が2人居た。
徳丸と里奈である。
「だって、本当に見たんですよ。
すっごく大きいの。こないだ海で見たようなサメを」
里奈が両手を大きく広げて言った。
その顔は青ざめたままだった。
「おまえは近いうちクビだから、覚悟しとけよ」
「そんなあ。ここクビになったら、私行くとこありません」
「知るか、そんなこと。
お、警備が手薄になった」
徳丸は横目で屋敷の門を見ていた。
警官の1人が呼ばれて、中へと入って行くところだった。
「今だ、行くぞ!」
徳丸は里奈の片腕をつかむと、門に向かって強引に進みだした。
「ち、ちょっと」
里奈は慌てて言ったが、そのまま徳丸に引きずられた。
徳丸は、門に張られたテープをくぐり、中に入った。
里奈もそれに続いた。
他のマスコミ関係者たちは、呆気にとられて2人を見ていた。




