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しばらくして、プールサイドに、黒服にサングラスのがっちりした体格の男が姿を見せた。
「まだ外にいるのか」
マットの上で寝そべっている男が尋ねた。
「はい、この暑い中、張り込みを続けています」
黒服のボディーガード風の男が答えた。
「馬鹿なやつらだ」
「どういたしましょう?」
「放っておけ。
下手に動くと、また何書かれるか分らんからな」
「承知しました」
黒服の男は答えると、屋敷の中へと戻って行った。
「ちっ、不味くなったじゃねえか」
男はつぶやくと身を乗り出し、水の上にグラスを傾けた。
グラスに入っていた赤い液体が、プールの水に流れ落ちた。
まるで、血のように見えた。
「ちんけなタブロイド誌の分際で、生意気に嗅ぎまわりやがって。
よっぽど頭が悪いらしいな。
見せしめに一人殺してやるか。
ちょっとは学習するだろう」
やがて、男は疲れたのか、読みかけだった雑誌を広げて顔の上にかけ、仰向けのままプールに浮かんだマットの上で寝てしまった。
夏の陽射しが、さらに強く照りつけていた。




