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「写真、いつでも撮れるよう準備しとけよ」
「この蒸し暑い中、張り込むんですか?」
「そうだよ」
「こういう時は、冷房のある車の中で待つんじゃないですか?」
「馬鹿、うちの社には車がねえんだ」
「汗すごくかいたんで、シャワーでも浴びたいんですけど」
「寝ぼけたこと言うんじゃねえよ。
今日はインタビュー出来るまで帰らねえからな」
「そんなあ、私、女の子ですよ」
「この仕事をしている以上、おまえを女だと思わないようにしている」
徳丸はゲームをしながら言った。
「ブー」
里奈は頬を膨らませた。
2人が張り込んでいる屋敷の庭は、荘厳なものだった。
かなり頻繁に手を入れているらしく、木々の枝葉や芝生はきれいに刈り込まれ、名のある日本庭園のようである。
この美しい庭の奥に豪華な屋敷があり、縁側からすぐの位置にプールがあった。
プールは幅15mほどあり、その上に浮かべたマットの上に、サングラスをかけた上半身裸の男が仰向けに寝そべっていた。
年齢は40代ぐらい。
片手に赤い液体の入ったグラスを持ち、雑誌を読んでいる。
雑誌は、徳丸と里奈が勤める啓示社のもので、記事は、この男の行状を糾弾する内容となっていた。




