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「いきなり来て、会えとかインタビューに答えてくれとか、無茶じゃないですか?
相手だって忙しいかもしれないし、会いたくないかもしれないし」
「どこの新聞社もテレビ局もやってることなんだよ」
徳丸はしゃがみこむと、薄汚れた鞄をアスファルトの上に置き、ごそごそと何かを探し始めた。
「まったく、都会の真ん中でプールつきの豪邸に住みやがって」
徳丸は、鞄の中からカラフルなコントローラーの付いたゲーム機を取り出した。
「ええーっ、プールまでついてるんですか?
それはいいかもです」
里奈は、片手を額に当てたまま、上空を見上げた。
真夏の太陽が容赦なく照りつけ、まともに目を開けていられなかった。
こんな時に自宅でプールに入れるなんて、この世の天国だと思えた。
「馬鹿言え。さんざん、ひどいことしてきたんだぜ。
特に女や年寄りが被害に遭っててな。
最後は恐喝まがいの脅しの末に、泣き寝入りだよ」
徳丸は感情を吐露するようにまくし立てた。
「それはひどいかも」
里奈は頬を膨らませた。
「大金を手に入れるには、あくどいことするしかねえのか、やっぱり」
徳丸は壁にもたれると、ゲーム機のスイッチを入れた。
「おい、今日はここで張り込むぞ」
「え、ええーっ?」
里奈は目を丸くした。




