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キラーB  作者: 獅子奉篁
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「少し前にお会いしましたよね?」


里奈は男の横にしゃみこんだ。


「さあ?そうでしたか?」


男は里奈には顔を向けず、やはり鬼気迫る様子で筆を走らせている。


里奈は、次にかける言葉が見つからず、黙りこんだ。

あまりの緊張感のため、息苦しさえ感じ始めていた。


「海にはよくいらっしゃるんですか?」


里奈は沈黙から逃れるように口を開いた。


「いえ」


男はまったく表情を変えず、キャンバスに向かったまま答えた。


「普段はどんな絵を?」


「いろいろと」


「へー、見てみたいな」


そう言って里奈が、組んだ両手を顎の下に置いた時だった。


2人の目の前に、一匹のトンボが飛んできた。


「あっ」


里奈は小さく声を上げ、男は筆を止めた。

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