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「事件当時、現場の客室は本当に密室だったんですか?」
記者の1人が質問した。
「ええ、おそらくは。
第一発見者であるホテルの従業員4名と一般人1名は、ホテルの合鍵で部屋に入っております」
中田が答えた。
「自殺の線はありませんか」
別の記者が質問した。
「ありえません」
「何故ですか」
「体中に引き裂かれた酷い傷がありまして、その上、喉も切られております。自分だけであんなことは出来るもんじゃありません。
あまりにも無惨で、とても見れたもんじゃないですな」
記者たちはざわめきだした。
だが、こんな時だというのに、徳丸は里奈の肩に頭をもたれ、いびきをかいて眠っていた。
「先輩、徳丸先輩、起きて下さいよ」
里奈は小声で言い、徳丸の体を揺すった。
しかし、一向に起きる様子が無い。
「んもう」
里奈は諦めて、大きなため息をついた。




