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徳丸と里奈は、現場である帝王ホテルにタクシーで乗りつけた。
緊急時のため、デスクからタクシーの使用許可が下りたのだった。
他のマスコミ関係者はまだ居なかったが、ホテル内は厳重なチェック態勢が敷かれており、ロビーより先には入れなかった。
「おいおい、これじゃ早く来た意味がねえだろうが」
徳丸が一人毒づいた。
「ずいぶん早いな」
背後からの声に振り向くと、刑事の堀田が立っていた。
「堀田さん・・・・・・、ようやくのご到着で」
「昨日の現場から来たんだよ。
今日は見かけなかったが、おまえんところは昨日で取材終了か?」
堀田は皮肉るように言った。
「へへへ・・・・・・、ウチは常に新しい事件を追いかけてるもんで」
徳丸は苦笑いを浮かべていた。
「ウソばっかり。鳥を追いかけてたくせに」
里奈が小声でつぶやいた。
「おまえは黙ってろ」
徳丸は里奈の頭を小突いた。




