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「ひ、ひぃぃぃぃー」
石橋の声がさらに部屋の外に響いた。
男性スタッフは、激しくドアを叩いた。
「お客さま!どうなさったのですか!」
「どうしたの?春ちゃん、どうしたのよ!」
女も一緒にドアを叩き、ドアの取っ手を何度も動かした。
だが、ドアは開かない。
「お客さま!お客さま!」
男性のスタッフが叫んだ。
しかし、石橋がそれに応えることはなく、部屋からはなおも彼の悲鳴が響いてくる。
だが、そればかりではない。
石橋の声の他に、大きな物音と、獣の吠えるような声が部屋の中から聞こえてきた。
「チーフに連絡だ!
この部屋の鍵を持ってきてもらうんだ、早く」
男性スタッフが、駆け寄ってきた女性の客室係に叫んだ。
客室係は、慌てて電話をかけた。
「どうしたの?
ねえ、どうしたのよぉ」
女は完全にパニック状態になっていた。
男女のスタッフは、懸命に女をなだめた。
いつの間にか、部屋の中からは何も聞こえなくなっていた。




