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一方、女性の客室係は、上司への説明に手間取っていた。
ホテル内に猪が侵入することなどあり得なかったため、信じてもらえなかったためである。
この時、エレベーターの扉が開き、ホテルのスタッフと一人の女性がこのフロアに降り立った。
女性は石橋が呼び出したコールガールで、派手なメイクに髪、さらには赤の露出の多いワンピースに身を包み、キャバ嬢そのままの格好をしていた。
男性スタッフは女性のバッグを持ち、石橋の泊まる部屋へと案内するところだった。
女性の客室係は携帯電話を手にしたまま、2人の前に駆け寄ると、
「現在、このフロアは危険です。
安全が確認されるまで、別のフロアでお待ちください」
緊迫した声で言った。
「危険って、何があったんです?」
男性スタッフの顔色が変わった。
「実は、先程このフロアに猪が現れまして」
客室係は、言いづらそうに口を開いた。
男性スタッフは唖然とした顔になった。
一方、石橋に呼び出された女は、
「はあ?イノシシ?なにそれ?
どこにいるのよ
喧嘩売ってるわけ?」
呆れたように言った。




