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キラーB 9
「玄関まではどうやって来たんだ?」
部屋の玄関までは、この液体が見られなかったことが頭に浮かんだ。
だが、それを考えるのは後回しにした。
遅れて到着した部下の刑事、篠原が部屋に入ってきた。
190近い長身で、がっしりとした体躯の男である。
「何だ、この液体は?それに、この臭いは何だ?」
篠原が、片手で大きく自身の顔の前を払いながら言った。
その動きはかなり雑で大袈裟なものに思われた。
「お疲れ様です」
その場に居た2人の鑑識が、堀田たちに頭を下げた。
「ご苦労さま。ところで、死因は何だね?」
堀田は軽く手を上げた後、柔らかい口調で尋ねた。
「窒息死、だと思われます」
「窒息死?」
堀田は首をひねった。
「布かなんかを使ったのか?まさか、溺れ死んだわけじゃねえよな。
それにしても・・・・・・、こんなことは初めてだ」
液体が付着した死体を見ていた堀田は、あることに気づいた。
死体の剥き出しになっている部分、顔や手には、いくつもの円い跡が刻まれていた。
500円玉より少し大きい程の大きさだった。




