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ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


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楽しい夢だと、ずっとそこに居たくなりますよね?……でも、夢はいつか醒めるんですよ。

 「ねぇ、一応聞くけど、アースドラゴンはどうやって倒したの?」

 隣を歩くエルが聞いてくる。

 俺達は今スカイドラゴンのねぐらを目指して、ファルス草原を歩いている所だった。

 草原に入ってから変わり映えのしない景色に飽きてきたのだろう、リディアも興味深そうに見上げてくる。


 

 「どうやってと言われても、エクスプロージョン級の自爆をするゴーレムを100体ほど作り出して、ドラゴンに取りついたところで一斉に、どんっ!……と。」

 「わぁ……。」

 「ひどっ……。」

 俺の説明を聞いて二人ともドン引きになる……何故だ?解せん……。


 「それで、この先の……スカイドラゴンだっけ?はどうする予定なの?」

 「それはだな……。」

 俺はいくつかの魔石を取り出す。

 『召喚用ゴーレム君(仮)』の魔石だ。


 アースドラゴンの時はその場でゴーレムを作ったが、この魔石は作成したゴーレムを魔石に変換させていつでも呼び出せるようにしたものだ。

 俺一人なら、これを投げつけて、アースゴーレムと同じように取りついたところで自爆させる予定だったが、二人が手伝ってくれるなら他の手を使う事にする。


 スカイドラゴンの特徴は、空を飛ぶことにある。

 空を飛ぶことを重視している為か、他のドラゴンに比べて防御力が低いのが救いだ。

 ただし、その分スピードは並外れていて、まともに立ち向かったのでは攻撃をあてることが難しい。

 実際のところ、ゴーレム君もただ投げるだけでは取りつくのは難しいと考えていて、スカイドラゴンの動きを止める方法を模索していたのだが、二人が居れば話は違ってくる。


 検証したところ、二人とも魔法の種類や威力、効果など、寸分変わらず使用できることが分かった。

 このUSOの世界に変換すると、二人の魔術スキルは上級の熟練度カンスト目前と言う所なので、ドラゴン相手でも十分通用する。

 なんか、上級者を連れて、中級レベルのモンスター狩りをするようで気が引けるが、国元の情勢が不安定だと聞いた今では、悠長にレベル上げなどやっている暇はない。

 使えるものは何でも使って最短でクリアしなければならないのだ。

 

 「スカイドラゴンが、リディアの射程に入ったら『隕石群衝突(メテオ・ストライク)』をぶちかます。これだけでかなりのダメージとを受ける上、飛び上がれなくなるはずだ。そうしたら続いてエルが『大爆流渦(メイルシュトローム)』を放つ……これで終わりだと思うけど、万が一HPが残っていたら、最期は俺が斬り裂いてThe ENDってところかな?」

 「そんなにあっさりと行けるの?」

 エルが疑わしそうに聞いてくる。

 まぁ、向こうでのドラゴンと言えばSSS級の超危険モンスターだからな。

 エルやリディアの魔法を数十回あてても、それ程のダメージが与えられないという、正真正銘のモンスターだ。

 「大丈夫、ここでは強さの調整がされているから、今の俺がまともにやり合っても何とかなるレベルなんだよ。」

 俺の記憶が戻っても、強さはUSO内に準拠したままだ。

 下手に記憶が戻ったため、戦い方がちぐはぐになってしまった。

 例えば、空間スキルが使えないのに、相手の攻撃を『空間転移(ディジョン)』で躱そうとしたり、持っている武器が『死神の鎌(デスサイズ)』のつもりで相手を斬り裂こうとして、堅い鱗に阻まれたり等、つい向こうの戦い方のくせが出てしまっている。

 そう言う意味では、記憶を封じるって言うのは有効だったとは思うんだけどね。


 「それに比べて、エルやリディアの強さは、アイスドラゴンと充分渡り合える強さなんだから、スカイドラゴンなんて余裕だよ。」

 俺がそう言うと、そういうものかと納得するエル。

 ……表情を見ると、心から納得したわけじゃなさそうだけど、実際に戦ってみればわかるだろう。


 「っと、見えて来たぞ。」

 俺達は一旦足を止め、スカイドラゴンの様子を窺う。

 草原の中に少し小高くなっている所があり、そこがスカイドラゴンの巣なのだろう、頂上付近で羽を休めている。

 「取りあえず隠蔽魔法をかけるから、ゆっくりと行けるところまで近づこう。」

 ただっぴろい草原の真ん中で身を隠すものなど、何一つとしてない。

 なので、隠蔽魔法で気配を消して近付くという作戦だ。

 どこまでいけるかは分からないが、採集中に邪魔されるのが嫌で会得したこのスキルは、常時使用していた為に熟練度はカンストしている。

 たとえドラゴンと言えども、そう簡単に看破できないはずだ。

 そして、俺達はリディアの射程に入るところまで近づければそれでいい……充分勝算はあった。


 「勝算はあったんだけどなぁ……。」

 俺がつぶやくと、疲れた声でリディアが応えてくれる。

 「飛んで行っちゃいましたねぇ。」

 「今回は仕方がないわよ。」

 エルも慰めてくれる。


 俺の隠蔽は完璧だった……完璧すぎた。

 まったく気配が無い為、スカイドラゴンも俺達がいるとは気づかずに、そのままどこかへ飛び立ってしまった……たぶん狩か、縄張りの見張りに行ったのだと推測されるけど、もし、俺の隠蔽が不完全であれば、気配を感じたスカイドラゴンは警戒して飛び立つことは無かっただろう。

 「まぁ、戻って来るのを待ちましょう。」

 「それしかないよなぁ。」

 結局、俺達はスカイドラゴンが戻って来るまでの1時間を、そこでぼーっとしながら過ごしたのだった。


 ◇


 「あんなのはドラゴンさんじゃないですよぉ。」

 ホームに戻ってきても、リディアがぶつぶつと文句を言っている。

 「この世界ではあれが普通のドラゴンだよ。」

 俺は既に何回も繰り返しているセリフを言う。

 「でもでもでもぉ……。」

 リディアがこんなに怒っているのには訳がある。

 スカイドラゴンが戻ってきた時、リディアの『隕石群衝突(メテオ・ストライク)』だと、俺達も巻き込まれる危険があったため、とりあえずエルの『集光の矢(ソル・レイ)』で牽制し、充分距離を空けてから『隕石群衝突(メテオ・ストライク)』を撃つという話になったのだが……。

 ふたを開けてみれば、エルの『集光の矢(ソル・レイ)』がスカイドラゴンの翼に穴をあけて墜落。

 もう一度『集光の矢(ソル・レイ)』を撃ち込んだところで俺が首を掻き切り、あっさりと終了……リディアの出番は全くなかったのだ。


 「まぁまぁ……気持ちはわかるわよ。ただ、あんなのを倒しても強くなったって言えるの?」

 エルがリディアの頭を撫で、宥めながら疑問を口に出す。

 「いや、だから普通はもっと苦戦するんだって。今回は高レベルのお前達がいた事と、3人パーティだったから余裕だっただけで。」

 実際、俺がソロで立ち向かったらかなり苦戦しただろう。

 女神はそれを期待していたのだろうけど……。


 「どうしたの?」

 俺が考え込んでいるとエルが顔を覗き込んで聞いてくる。

 「いや、女神の目論見通りに動かなかった俺って、やっぱりまずかったのかな?と。」

 「今更ね。」

 「今更ですぅ。」

 二人が声を揃えて言う。

 そのトーンはかなり呆れかえったものだった。


 「ま、まぁ、とにかくだ。次はファイアードラゴンだけど、少し準備もしたいから、出発は三日後でいいかな?」

 俺がそう言うとエルが少し困った表情になる。

 どうした?と聞くと、少し考えてから話してくれる。

 「あまり無理するのも良くないけど、そんなに悠長にしていられる時間があるのかなぁって。」

 エルの心配ももっともだ。

 聞いた話では、俺がいない間にグランベルクの南方で問題が起きていて、そのトラブルがグランベルクに飛び火するかも?という事だったので、一刻も早く戻らないと、と気が焦るのは当然だと言える。


 「二人の話からすると、もしグランベルクが戦火に巻き込まれるとしても、戦端が開かれるまでに1週間はかかる。そして、近隣諸国の軍備状況から考えると、グランベルクの王都まで攻めあがるのに、順当に行っても最短でも1か月はかかる。」

 俺はそこまで言うと二人の顔を見る。

 二人はウンウンと頷いていてくれる。

 「つまり、もし、二人がここに来た時にすでに戦端が開かれていたとしても、ギリギリ1ヶ月は時間があるって事だ。そして、二人の話から逆算すると、ここで過ごす3日が向こうの1日になるらしい。」

 「そうなの?」

 「って事は、シンジさんは半年以上私達を放置していたことに……。」

 「待て待て、今はその話は置いといてだなぁ……。」

 話がおかしな方に転がりかけたので、慌てて戻す。


 「次のファイアードラゴン討伐に準備期間を入れて1週間、そして最後のアイスドラゴン討伐は10日かかるとみている。不測の事態の事も考えて、戻れるのは3週間後……向こうでは1週間と言う所だ。流石にそれくらいなら、何とかなるだろう?」

 「ウン、それぐらいなら、ね。」

 「えーと、私達に何かできる事ありますかぁ?」

 「そうだな、レベル上げの手伝いと、後は美味しいものを作ってくれると嬉しいかな。」

 何か手伝いたいというリディアにそう告げる。


 次のファイアードラゴンは、エルとリディアにとって相性のいい相手なので、俺のレベルが低くても何とかなるだろう。

 問題はその次のアイスドラゴンだ。

 ファイアードラゴンとは逆に、やや相性が悪くなるので、有効な装備の作成と、俺のレベルの底上げが必要になりそうだ。

 その為の準備期間なんだが……。

 

 「ま、やると言ったからな。何とか結果出さないと。」 

 ファイアードラゴンに対しての戦術はすでに頭の中にある……と言っても、完全に二人頼みの方法だけどな。

 リディアの『大地崩壊(グランド・フォール)』でファイアードラゴンの態勢を崩し、エルの『大爆流渦(メイルシュトローム)』を連発する。

 たぶんこれだけでケリがつくだろう。

 だから俺がやることは、その次のアイスドラゴン対策だ。


 アイスドラゴンに有効なのは火の属性……エルもリディアも火の属性は持っていないので、メインの火力は俺という事になる。

 「……で、何でここなんですかぁ?」

 俺が来たのは巨大な溶鉱炉の前だ。

 「いや、生産しながら、俺の火属性魔法でこの溶鉱炉の火力を上げれば、十分熟練度稼ぎになるんだよ。」

 「はぁ、そんなものですかぁ?」

 リディアが呆れた声を出すが、俺としては作っておきたいものもあるから譲れない。

 俺は呆れかえるリディアを放置して、ファイアードラゴンを討伐に出かけるまで、溶鉱炉の前から動かなかった。


 ◇


 『大爆流渦(メイルシュトローム)

 エルの魔法でファイアードラゴンの身体が崩れ落ちる。

 「ご苦労さん。」

 俺はエルに労いの言葉をかける。

 予想通り、エルの『大爆流渦(メイルシュトローム)』三発で片が付いた。

 リディアは最初に『大地崩壊(グランド・フォール)』を放っただけで、その後出番がなかったために、少しむくれている。

 「少し欲しい素材があるから採集してくるな。エル、後は頼んだ。」

 俺は腕に引っ付いているリディアを引き離してエルに預けると、ファイアードラゴンの亡骸のもとに行き必要な素材を剥ぎ取る。

 さらに近くの採集ポイントから、必要な素材と集めれるだけ集める。

 そうして、暫くの間採集に勤しみ、必要な分を集め終えて二人の元に戻るが、エルの俺を見る目が冷たい。

 リディアは疲れ果てたのか、エルの膝枕で寝ている。

 「こんな時まで採集?アンタ、今どういう状況か分かってるの?」

 「分かっているから素材を集めてるんだよ。お前ら、火属性持ってないだろ?」

 俺の言葉に黙り込むエル……まぁ、普段の行いが悪いんだろうけど、もう少し信用してほしいな。

 「とりあえず戻ろうか。アイスドラゴンの討伐について相談もしたいしな。」

 俺は、まだ寝ているリディアを背負って帰路につく。

 心なしかエルが膨れているように感じるのは……気の所為としておこう。


 「スカイドラゴンもファイアードラゴンも手ごたえ無かったけど、アイスドラゴンはどうなのよ?」

 帰り道、エルがそんな事を聞いてくる。

 「アイスドラゴンは、他のドラゴンに比べて魔法抵抗力が高いからエルの魔法の中で効果的なのは光魔法ぐらいだろうな。リディアの魔法は、場所も考えると、足止めとサポートぐらいしかできないと思う。」

 「ん……決定打に欠ける?」

 「そう言う事だ。アイスドラゴン戦では、エルたちに援護してもらいながら、俺が戦わないといけないだろうな。」


 アイスドラゴン戦の推奨Lvは60、俺の現在のLvは42……20近いLv差をエルたちの魔法とアイテム、スキルで埋める必要がある。

 「その為に、これらが必要だったんだよ。」

 俺は素材をしまったアイテム袋をエルに見せる。

 「ふーん、ちゃんと考えているんだ。」

 「当たり前だろ?」

 「そう言いながら、関係ない素材迄集めていそうだけどね。」

 エルは笑いながらそう言う。

 「そ、そんなことあるわけないだろ?」

 鋭い……と言うか、わかってて言ってるんじゃないだろうな?

 俺のそんな思いをよそに、エルはスタスタと先を歩いていく。

 ……ま、いっか。

 俺はエルの後を追いかけていった。


 ◇


 それからの1週間はかなりの多忙を極めた。

 昼は、対アイスドラゴン用の装備を作り、それに慣れるために狩りに行き、必要に応じて調整を行う。

 夜は、エルとリディアを満足いくまで甘えさせ、寝不足の眼をこすりながら火の熟練度を上げる……というような毎日が続いた。

 

 そして今、俺達はグリューン氷穴の前にいる。

 「さぁ、最後のドラゴン退治に行くぞ。」

 俺は氷穴の中へと足をすすめる。


 ここをクリアすれば、長い夢も終わる……いい加減、みんなのもとに帰らないとな。

 俺はアイスドラゴン戦に向けて決意を新たにするのだった。


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