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ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


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また女神様?……ちょっと出過ぎじゃないですか?

 「ここだな。」

 俺は目の前に広がる真っ白な平野を見つめる。

 山脈の奥にこの様な雪原が広がっているのは聞いた事が無かった。

 『そうです。以前はこんな場所は無かったのですが。』

 子犬サイズにまで小さくなったレオンがそう伝えてくる。

 「一体、何が起きているんだか……。何か心当たりはないか?」

 『……心当たりと言えるかどうか……考えられるとすれば、魔王、ですな。』

 「魔王か……。」

 元々、この山脈の奥に、このような場所は無かった。

 しかし、魔王の仕業と思えば納得がいく……と言うか、わけわからないことは全て魔王の仕業だ、そうしておこう。


 「魔王の仕業なら……何があるか分からないな。と言うより何が起きてもおかしくは無い、か。」

 俺は後に続く彼女たちを見る。

 彼女たちは力強く頷いてくれる。

 「よしっ、注意しながら進むぞ。」

 俺は先に立って雪原へと足を踏み入れた。


 クラッ……。

 突然のめまいに襲われる……これは!?

 俺は深く考える間もなく意識を失う……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ――――――真っ白い闇の中にいる。

 ……ここは……覚えがある……。

 (聞こえますか?シンジ……。)


 ……あぁ、ここはいつもの『女神の間』か?

 (『女神の間』ですか、中々趣がありますね。)

 

 ……それで、何の用だ?

 (つれないですね、魔王に何か吹き込まれましたか?……まぁいいでしょう。時間もありませんからね。)


 ……魔王の件、何か知っているのか?

 (時間がありませんからね、その事は後回しにしましょう。この世界であなたはとても弱い事は自覚していますか?)

 ……そんな事、俺が一番よく分かってるよ。

 正直エル達より弱いことも分っている……だがそれが何だというんだ?


 (あなたはその弱さを知略で補ってきましたが、激動の戦乱の中それだけでは心もとないのはあなた自身がよく理解しているはずです。)

 ……だから何だというのだ。


 (私達としても、あなたを失うわけにいきませんので、特別措置を取らせていただきます。)

 ……特別措置?

 (えぇ、そうです。あなたにはこれからある場所に行っていただきます。)

 ……ある場所?

 (えぇ、あなたもよく知る場所です。そこであなたには強くなってもらいます。)

 ……強く……だと?そんな時間は……。


 (時間は気にしなくても大丈夫です。勿論彼女たちの事も。それに……。)

 ……どういうことだ?

 (……あなたに拒否権は無いのですよ……さぁ、お行きなさい。)

 女神が手を振るイメージを感じる。

 その途端、俺の身体が何か強い力で引っ張られる。


 (あなたの記憶・能力を一時的に封印します。まずは『女神の欠片(カケラ)』を探すところから始めるといいでしょう。)

 ……何なんだ一体……。

 (無事のお帰りをお待ちしてますよ。)

 その女神の言葉を最後に、俺の意識は途切れた……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ……ここは?

 俺は辺りを見回す。

 ……何もない部屋だ……しかし見覚えがある。

 『ようこそ、始まりの場所へ!』

 どこからともなく機械的な声が聞こえてくる。

 その途端、頭の中に膨大な量の情報が流れ込んでくる。

 この世界のあらまし、スキルやステータスについて、クエストの受注に戦闘の仕方等々……。


 ……これはよく知っている……俺が遊んでいたUSOの世界そのものだ。

 しかし、USOはいつの間にVRになったんだ?

 そもそもVRの技術はいつの間にここまで発展したんだ?

 いや、それより……俺は誰(・・・)なんだ?


 『では、楽しいUSOライフを。』

 突然光に包まれて部屋の外へと強制転移させられ、俺は呆然としたまま、街の広場へと放り出された。

 

 「さて、どうしようか?」

 俺は口に出して呟いてみる。

 道行く人が怪訝そうに見ながら通り過ぎていくが、気にしてる余裕はない。

 「……取りあえず、現状を整理してみようか。」

 俺は近くのベンチに腰掛けて、今置かれている現状を確認することにした。


 まず、俺とこの世界についてだ。

 この世界はUSOに酷似している……と言うか先程得た情報からすればUSOそのものだと思う。

 そして俺はUSOのプレイヤー……なのか?

 強くイメージしてみると、自分のHP/MPや各種ステータス、スキルなどが目の前に浮かぶ。

 「『name:シンジ』……シンジ、それが俺の名前か。……しかしLV1の無職ね……完全に初級プレイヤーだな。」

 俺については考えても無駄だと割り切り、深く考えないことにして、これからどうするかを考える。


 「冒険者ギルドに言って登録、スキルを習得して、装備を整えてレベル上げ……が定番だけど。」

 グゥ……。

 お腹が鳴る。

 「まずは腹ごしらえかな。」

 俺はアイテム欄を確認する。

 「基本初期装備と薬草が三つ、そして1000Gか……。」

 市場を見回ると、様々な食材やアイテム、後は露店などもある。

 俺は露店で、焼き串を購入する。

 1本3Gなのでとりあえず5本ほど買っておく。


 じーっ。

 俺が買った焼き串をじ~っと見つめている女の子がいる。

 ん?欲しいのかな?

 俺は串を持った手を右へ、左へと動かして見る。

 女の子の視線が、右へ、左へと焼き串の後を追っている。

 ……面白い。


 「食べる?」

 俺は女の子の目の前に焼き串を差し出す。

 彼女は、焼き串を見て、そして俺を見上げる。

 「食べる?」

 俺はもう一度聞く。

 女の子はコクコクと頷いたので、俺は焼き串を上げることにする。

 女の子は嬉しそうに、もぐもぐと焼き串を頬張りながら、街の雑踏へ埋もれていった。

 「……なんだかなぁ。」

 俺は彼女を見えなくなるまで見送ると、冒険者ギルドに足を向ける。


 「はい、これで登録完了です。ジョブ登録はどうしますか?」

 「いや、これからスキルを習得するから後でいいよ。」

 「分かりました、では必要になったらまた来てくださいね。」

 受付のお姉さんに見送られて、俺はギルドを後にする。


 「さて、と、次はスキル習得と装備か。」

 USOは知られているだけで500以上のスキルがあると言われている。

 スキルだけで1冊の攻略本が出来るぐらいだ。

 それだけあれば、有用なスキルから、定番と言われるスキルだけでなく、役に立たない、所謂ネタスキルとか死にスキルとか言われる部類のものまで沢山あり、その中から自分のプレイスタイルに合うものを取捨選択していくのだが……。


 「Lv1だと初期スキルの中から5つしか選べないんだよなぁ。」

 取りあえず、自分にどんなプレイスタイルが合っているか分からないので『武器の心得』『魔法の心得』『回復魔法』『採集』『調合』の5つを習得する。


 攻撃に関してはどの武器があっているか分からないので、固定の武器のスキルはまだとらない。

 知り合いがいる訳でもないので、ソロでやっていくことを考慮し、回復やアイテムの作成ができる下地を作っておく。

 その後、武器屋で適当な剣を買い、道具屋でポーションと、採集キット、調合セットを買うと、残金は50Gしか残らなかった。


 「取りあえず近くを見てみるか。金策もしないといけないしな。」

 街の近くの草原に出てみる。

 「確か、ここに出るのは……っとっ!」

 脇の草むらから角の生えたウサギが飛び出してくる……ホーンラビットだ。

 そのスピードと額の角による一撃は、低LVの時はかなりの脅威になる。


 「とっ、はっ!クッ……。」

 俺は剣を振り回すが、なかなか当たらず、逆に俺の方が細かい傷を負っている。

 「このっ!」

 ずしゃっ!

 「ようやく一匹か。」 

 俺はホーンラビットのドロップアイテムをアイテム袋に入れた後、周りを調べる。

 近くの薬草を採集し、離れたところでキャンプを張る。


 「うーん、剣は合って無いかなぁ。」

 とはいっても別の武器を用意するには先立つ物が必要だしな。

 俺はポーションを飲んでHPを回復させながら考える。


 今消費したポーションで3本目……初級ポーション一つが10G……1回の戦闘で30Gの消費。

 ホーンラビットのドロップアイテムがNPC売りで10G。

 ウン、割に合わないな。


 取りあえず調合でもしてみようか。

 俺は調合セットを取り出して、採集してきた薬草を使って調合を始める。

 「薬草2個で初級ポーション一つ……全部で10本出来たけど……ウーン……。」

 しばらくは採集・調合を中心に金策した方がいいかもなぁ……でもLVも上げないとなぁ。

 「取りあえずは、ウサギさんに遊んでもらいますか。」


 その後、ホーンラビットと戦い、疲れたら採集をしてポーションを調合する、という事を繰り返した。

 レベルが上がり、ヒールの使用回数が増えた事によりポーションの消費量が減ったので、調合した物が余り出す。

 「取りあえず、今日の所はこれくらいかな。」

 俺は街へ戻り、アイテムを売り払うと宿をとり、休むことにする。


 「今日はこれで終了……はいいけど、どうやってログアウトするんだろうな。」

 俺はベッドに寝転がり、メニューを見ながらログアウトに関する項目が無い事を確認して考える。

 「何か大事な事を忘れてる気がするんだが……。」

 しかし、戦闘で疲れていたのか、俺は深く考える間もなく、段々と睡魔に襲われ、そのまま眠ってしまった。


 ◇


 「ん?朝か……。」

 俺は顔に当たる陽の明りを感じて目を覚ます。

 「ふわぁぁぁ……ん、なんか可愛い女の子の夢を見ていた気もするけど……。」

 俺はベッドから降りると、軽く身支度を整える。

 ログインしてここに居るのか、ログアウトできなかったのか……。

 「まぁ、深く考えても仕方がないか。」

 俺はメニューをイメージして呼び出す。

 現在の俺はLv5で、スキル熟練度は10%~70%の間で推移している。


 「取りあえずポーションでも作っておくか。」

 調合セットを取り出して手持ちの薬草をすべて初級ポーションにする。

 そして調合セットをしまいこみ、代わりに昨日買ってきた合成キットを取り出す。

 寝る前に習得した『合成』をセットすると、初級ポーションの合成を始める。


 「……まぁ、こんなもんか。」

 失敗もあったものの、7割の確率で成功し、ポーション20本、初級MP回復ポーション15本が出来上がった。

 「じゃぁ、レベル上げと採集に行くとするか。」

 俺は道具をしまい込むと、装備一式を身に着け宿屋を後にした。


 ◇


 あれから1週間が過ぎた。

 俺のレベルはそれほど上がっていないが、調合・合成・鍛冶・細工などの生産スキルの熟練度がかなり上がっている。

 もう少しあげれば中級スキルに進化させることが出来るようになる。

 それなりにお金も溜まってきたので、もう少し稼げばホームを買って宿屋暮らしともおさらばできそうだ。


 今日も稼ぎに行くぞ、と意気揚々と宿屋を後にする。

 ギルドによって、簡単な討伐と採集依頼をいくつか受けて町はずれの森へと向かう。

 稼ぎから考えると、そろそろ拠点を別の街に写した方がいいかも知れない。

 そんな事を考えながら歩いていると、不意に女の子が目の前に立ち塞がる。

 金髪・碧眼の小柄な美少女が俺になんの用だろうか?

 PKってわけでもなさそうだし……というかそもそもPKはシステム上出来ない様になっている。

 俺が不思議に思い、立ち止まっていると、女の子が俺を指さして叫ぶ。


 「アンタ、こんなところで何やってるの!」


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