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ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


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神託とか予言とかって、解釈次第でどうともとれるように出来てますよね。

 「じゃぁ、次は私ですね。」

 エルの話が終わると、リディアが手を上げる。

 「あぁ、リディアの方はどうだったんだ?」

 「はい、私の受けた神託は……。」


 リディアの受けたのは、略奪された後の村のイメージと『裏切り』『策略』『シンジ』『死闘』『選択』のキーワードだった。

 そして、エルと同じく女神からのメッセージもあったという。

 

 「私の場合は、シンジさんと一生連れ添うようにって。」

 リディアが嬉しそうに言う。

 「本当にそんなこと言われたのか?」

 俺はリディアを軽く睨む。

 「えへへ……本当は『この先に進むなら覚悟すること。それが出来ないなら此処で国許に帰るように。覚悟して進むのなら、シンジさんから離れないようにしなさい。』だったかな?……簡単に言えばシンジさんLOVEでいいって事だよね♪」

 「どう解釈したらそうなるんだ。」

 俺は呆れたように言う。

 「だって、シンジさんと別れて帰国するか、このまま進むか選べって事でしょ?で、このまま進むならずっとシンジさんと一緒に居なさいって事だよね?」

 ……ったく、女神ってやつは、ワザと俺を困らせようとしてるんじゃないか?


 「まぁ、危険があるから、俺から離れるなって事だろ?」

 俺はとりあえずそう纏めておく。


 エルとリディアが受けた女神の言葉は「俺が帰ることを選んだ場合」を想定した物かもしれない、ふとそう思った。

 俺が「いなくなっても」恨まない、「俺がいない」なら帰国しろ……ってところか。


 「しかし、二人が受けた神託・・・・・・サッパリ分からん。」

 「分からないんですかぁ?」

 俺が言うとリディアが困ったように聞いてくる。

 「お前は分かるのか?」

 「分からないですよぉ。だから聞いているんじゃないですかぁ。」

 困ったようにいうリディア。


 「まぁ、単純に考えれば戦争に巻き込まれるって事だろうな。」

 「そうね、まぁ『闇に立ち向かう』って言うのがちょっと引っかかるけどね。」

 「なんか、黒幕に立ち向かうみたいですねぇ。」

 「オイ、ヤメロ。」

 リディアが何気なく口にする言葉を、俺は慌てて遮る。 

 そう言うのを『フラグ』って言うんだぞ。


 「まぁ、エルのキーワードの『魔王』とか、リディアのキーワードの俺の名前や『裏切り』って言うのが、ちょっと引っかかるけどな。」

 「……『シンジ』が『魔王』になって、私達を『裏切る』?」

 エルがそう呟くと、リディアとアイリスが俺を見る。

 「おいおい、洒落にならんからヤメロ。」

 「……シンジが魔王?……ないわー。」

 「シンジさんが魔王……エロ魔王?」

 「シンジ様が魔王……私は生贄……私はあんな事やこんなことを……ダメっ、ダメですわっ!」

 「お前ら……。」

 言いたい放題だな……特にアイリスは何を考えてるんだ?


 「それで、シンジ様も神託を受けられたのですよね?」

 魔王について、ああだこうだとひとしきり言い合った後、アイリスが聞いてくる。

 「うーん、神託と言うか、アレは……何といえばいいんだろう?」

 「違うんですか?」

 アイリスが小首をかしげる。

 「そうだな……何から話すか……。」

 俺はエルを見ると、俺の視線の意味に気付いたエルが軽く頷く。

 「これから話すことは他言無用で頼む。」

 俺がそう言うとリディアもアイリスも頷いてくれる。


 「リディアは薄々感づいているかもしれないが、エルはグランベルクの更に向うにある国の王女だったんだ。」

 そう、王女だった(・・・)……情報によればハッシュベルクという国は、内乱で二つに分かたれた結果、後ろ盾になったそれぞれの国に吸収されてしまい、既に存在しない。

 「そして俺は、この世界の住人じゃない……。」

 この事は話すべきかどうかかなり迷ったが、俺が異世界人って事を話さないと、女神の話を理解してもらえないと思ったので話すことに決めた。

 

 「私からもちょっと補足するわね。これはシンジにも話してなかったことなんだけど……。」

 エルも俺との出会いについて補足してくれる。

 なんでも、エルは俺……というか「世界を渡りし運命の出会い」というのを神託で受け取っていたそうだ。

 あの広場で出会ったのは偶然ではなく、神託を受けたエルが俺を探していた結果だった。


 気づいたらこの世界にいた事、ハッシュベルクでエルに出会ってからの事などを、途中エルの補足などを交えて、順を追って話す。


 「シンジ様は『渡り人(・・・)』だったのですね。だからあのように変わったことを色々と知ってらしてんですね。」

 「渡り人?」

 エルが首をかしげる。

 「えぇ、古来より、アシュラム王国ではそう呼んでいます。渡り人は、どこからともなく現れ、見知らぬ知識を授けた後、いずこかへ去っていくので、知識を授け、渡り歩く人……『渡り人』と呼ばれるようになったそうです。」

 アイリスの話によれば、異世界から来た人間というのは少なからずいたようだ。


 「それで、ここからが本題なんだが、俺はあの時女神本人と話をしたんだよ。」

 俺はあの真っ白な世界で交わした、女神との会話を思い出しながら、どのようなことがあったのかを三人に話す。

 

 「……つまり、俺は手違いでこの世界に呼ばれたという事で、今回の女神とのコンタクトは俺を元の世界に返すためのものだった、という訳だ。」

 俺が来たことによる混乱、俺がいなくなった後に予測されることなども話す。

 

 俺が話し終えると、その場に静寂が訪れる。

 「それで……シンジはどうするの?」

 沈黙を破るようにエルが口を開く。

 「どうもしない。この状況を放っておいて、俺だけ元の世界になんて戻れるわけないだろ?」

 俺を見上げていたエルの瞳が潤み、それを隠すかのように顔を背けながら言う。

 「シンジのバカ……。」


 「シンジさん、大好きですぅ!」

 リディアが飛びついてくる。

 「シンジさんはぁ、私の為にこの世界に残ってくれるんですねっ!」

 俺の言葉を聞いて不安だったのだろう。

 明るく振舞ってはいるが、リディアの眼が赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。

 「そう言うわけだから、この先、世界が戦乱の渦に巻き込まれるのは間違いないと思う。」

 俺は纏わりついてくるリディアを、エルの方に放り投げながら言う。

 「そこで、ここで改めて方針を確認しておきたいと思う。」

 

 世界が戦乱に巻き込まれる……グランベルクとアシュラムの争いはまだ序章なのかもしれない。

 ベルグシュタットに戻り、迫りくる戦乱の渦から国を守るのも、選択肢の一つだろう。

 グランベルクに渡り、アシュラム王国からの攻撃を跳ね返し、戦争終結に力を注ぐのも間違いではない。

 アシュラム王国に潜り込んで、元凶となる筆頭魔術師を倒して国を取り戻し、外交によって戦争を回避する手もある。


 後は、エルにも大きく係る事になるが、グランベルクを通り過ぎて、旧ハッシュベルク領まで行き、シェラたちを探す。

 その後は、争いを避けつつ、旅を続ける……そう言う選択肢もとることは出来る。


 どの道を選んでも間違いではない……どの道を選んでも、何かしらの後悔は付きまとう事になるだろう。

 だけど、選ばなければならない。

 たぶん神託にあった『選択』というのはこういう事だろう。

 今回だけでなく、この先も様々なところで『選択』を迫られることは間違いないだろう。


 「私は……アシュラム王国に行きたい……と思います。」

 最初に口を開いたのはアイリスだった。

 「今の私の立場では、口の出すべきことではないかもしれません。また、私一人だけではどうしようもない事も分かっています。それでも……それでも、許されるのならば、皆さんと一緒にアシュラム王国に行きたいです。……国の中枢を取り戻すことが出来れば、きっと戦争を回避することも……。」

 そうは言うものの、それが難しい事を自分でも理解している為、段々言葉が途切れがちになっていくアイリス。

 「……。」

 そして、最後は黙り込み、俯いてしまう。


 「私の選択は『シンジさんにお任せ』ですぅ。女神様もシンジさんについて行きなさいって言ってたしね♪」

 リディアが、エルの拘束を振りほどいて、俺にすり寄ってくる。

 仕方がないので、膝の上に座らせ頭を撫でてやる。

 ……これは癒されるかも?


 「私の答えは……、もう少し保留させて欲しいかな。当初の予定の村に着くまでには決めるから……もう少し時間が欲しいわ。」

 エルはそう言いながら、俺の手元を羨ましそうに見ている。

 因みに、俺の手時は、リディアのほっぺたをムニムニしている。

 柔らかくて気持ちいいんだよなぁ。

 リディアもニコニコしながら、されるがままになっている。


 「とりあえず、戻るという選択肢は無くなったと言う事で、明日はこのまま山脈を越えるぞ。」

 話し合いは終わり、俺は遮音結界を解除させてテントを出る。


 ◇


 「本当に良かったの?帰らなくて。」

 焚火の前に座る俺の横にエルが腰を下ろす。

 「休んでなくていいのか?明日はちょっとキツイぞ?」

 俺はそう言いながらもエルの為に場所を開けてやる。

 「ありがと……。大丈夫よ。それより、さっきの答えは?」

 「さっきも言っただろ?俺だけ帰るつもりはないよ。」

 正直な話、何も問題がなければ……グランベルグの学園に通っている頃に、この話があったら、かなり迷ったと思う。

 だけど、エルやリディア、アイリスたちが困ることが分かっていて、帰るという選択肢は考えられない。

 

 「そうなんだ……。」

 エルは俺の肩に頭を預けてくる。

 「分からないの……。」

 しばらくしてから、エルがボソッと呟く。

 「最近、ハッシュベルクが遠いのよ。……でも、ハッシュベルクを忘れたら、私じゃなくなる気がして……。」

 エルが独り言を言うようにつぶやき続ける。


 「……ムリに忘れる必要はないけど、拘り続ける必要もないんじゃないか?」

 俺の言葉に、エルがぴくっと反応するが、俺は気づかないふりをして続ける。

 「フィン王が言っていた『王として国民を守る義務が有る』という言葉を覚えているか?」

 エルが小さく頷く。

 「アレは、フィン国王が国王の立場にあったから出た言葉だよ。エルがその通りにする必要はない。」

 「でも……。」

 「エルは、エルの立場で「守るべきモノ」「譲れないモノ」を見つければいい。それはハッシュベルクとは関係ないと、俺は思うよ。」

 エルの今抱えている不安は、それ(・・)が見つからないことからきているんだろう。 逆に言えば、エルにとって大事なモノ、譲れないものを見つければ、悩むこともなくなると思う。

 「そうなのかなぁ……。」

 「ゆっくり考えればいいさ。」

 俺はエルにそう告げる……が、俺は答えはエルの側に存在すると思っている。

 ただそれに気がついていないだけなんだ。

 

 そして、エルが女神から受けた言葉……「選ぶ」という事。

 たぶん近い内にエルは選択を迫られる。

 その時までにエルが気が付いてくれるといいんだけどな。


 ◇  


 エルとリディアの女神の神託と俺へのコンタクト。

 結果だけを見れば、特に変化があったわけでもなく、意味があった様には思えない。

 ただ、俺に与えられた力……チート能力という訳でもないが、これからの戦いにはきっと役に立つのは間違いないだろう。


 そして、それはすぐ実証されることになる。

 


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