表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/144

遠距離恋愛は続かないって思う派ですか?

 「シンジ様―!」

 隣の部屋から、ミリアの声が聞こえる。

 私は慌てて部屋の扉を開けると、眼前には部屋一杯に広がった眩しい光の渦と、そのそばでへたり込んで叫んでいるミリアの姿が見える。

 

 「ミリア、どうしました!?姫様は?」

 この部屋には殊勝にも、姫様の身代わりにトラップに囚われているあの男と、姫様がいたはずだ。

 しかし、光が収まった部屋の中を見回すと、部屋の中にはミリア一人しかいない。


 「エル様が、シンジ様が……。」

 虚ろな目で、譫言の様に、それだけを繰り返すミリア。

 私は彼女の目の前に行き、頬を2~3発引っ叩く。

 「あ、シェラさん……。」

 彼女の眼に光が戻る。

 

 「落ち着きましたか?姫様はどうしたのです?」

 「シンジ様が光に包まれて……エル様が、その後を追う様に……。」

 ミリアの話によると、押さえていたトラップが発動して、あの男だけでなく姫様まで巻き込まれたんだそうです。

 「シンジ様が、ギルドに報告しろと言い残されました。」

 そうですね、あの男の言うとおりにするのは癪ですが、これはギルドに報告するべきでしょう。

 見た感じ転移のトラップみたいですが、どこに飛ばされたとしても、ギルドのある町に辿り着ければ、そこから連絡が入るはずですからね。


 「街へ戻りましょう。戻ってギルドに報告しましょう。」

 私は、まだ呆然としているミネアと、事態が把握しきれていないアシュレイさんに声をかける。

 アシュレイさんは「あぁ」と力なく頷いているが、もう少ししっかりしてほしい。

 元をただせば、彼がこの話を持って来たのが原因なのだから……。

 私はそこまで考えて首を振る。

 

 姫様を守り切れなかったのは私の所為だ。

 人の所為にしちゃいけない。

 そういう考え方は、ミネア様が一番嫌う考え方だった。

 経緯がどうあれ、自分の意志で決めた以上はその結果に責任を持つべし、と。

 遺跡探索に行くと決まった時、私自身が姫様について行くと決めた……私が何があっても姫様を守ると。

 そう決めてやってきた以上、全ての責任は自分にあるのだ。


 「早く戻りましょう。」

 私は二人を促して、洞窟の外へと移動し、街へと急ぐのだった。


 ◇


 「ゴブリンの巣穴……ですか?」

 ギルドの受付のお姉さんが、胡乱そうな目で見てくる。

 「えぇ、私達が行った時には50匹以上の群れになっていました。」

 私は、その視線に気づかない振りをして報告を続ける。

 こういうのは弱みを見せたら負けですわ。

 「それで、ゴブリンを退治した後、奥で隠し部屋を発見、入った所で、二人がトラップに引っかかり、どこかに飛ばされた……というわけですか?」

 「その通りです。」

 受付のお姉さんは、私の背後の二人に視線を向けるが、二人とも、頷くだけだった。

 二人にはあらかじめ何もしゃべらないように、きつく言ってあります。


 あの男……シンジ様が、アシュレイさんの持って来た話は怪しいと言っていたのを覚えています。。

 いけ好かない男ではあるが、その判断力においては、私も認めざるを得ないですわね。

 あの男のお陰で、8種ベルクからグランベルクまで来れたのは間違いのない事実なのだから。

 もっとも、今回の件は私も怪しいと思っていた……というよりアシュレイさんが何の疑問を抱いていないのが理解できないですわ。

 今回の事において、弱みを見せないようにうまく立ち回らないと、罠に嵌められると、私の勘も告げています。

 なので、ぼろを出しそうな二人には黙っていてもらい、全ての交渉は私が行うと二人にも伝えてあるのですが、二人とも言うとおりにしてくれているので助かります。


 「最近、ギルドに遺跡の盗掘被害が寄せられているんですよ。」

 不意に受付嬢が話題を変える。

 「盗掘ですか?」

 この話は初耳だ。

 「そうなんです。何でも、新人冒険者の間で、未発見の遺跡があるというデマ情報が回っているらしくてですね、それを鵜呑みにした新人冒険者が、王都管理の遺跡を荒らしまわっているのですよ。」

 そう言って、受付嬢は背後の二人を再び見る。

 性格には二人の装備を……だ。

 

 「後ろのお二人は、中々いい装備をお持ちですね。」

 受付嬢はにっこりと笑うが、こういうやり取りは、私にとっては日常茶飯事なので、慌てない。

 「今回、ゴブリン達がかなりのお宝を溜め込んでいたんですよ。あのアシュレイさんの持ってる剣はホブゴブリンが持っていたものなんですよ。」

 これは嘘ではない。

 アシュレイさんが見つけた魔力剣は、もったいないと言ってアイテム袋にしまってある。

 そしてホブゴブリンが持っていた剣を二振り、普段使い用として持ち帰ってきていた。

 普段使い用とはいっても、鑑定すればそれなりの値が付きそうな業物だったりする。



 「ちなみに、その被害にあっている遺跡というのはどこにある遺跡ですか?」

 私は逆に受付嬢に問いかける。

 受付嬢は、疑わしそうな視線を向けつつも、地図を広げて、場所を教えてくれる。

 

 「成程、離れてはいますが、近いと言えば近いですね。……私達が発見したゴブリンの巣穴はここですよ。」

 私は、少し離れた場所にある山間の洞窟を指し示す。

 「確かに離れてはいますね……ところで、この魔種の状態から見ると、討伐後日数が経っているようですが、その間は何を?」

 「ホブゴブリンを含めると、最終的には100近いゴブリンの亡骸を処理してたんですよ。それなりに時間かかるのは分かってもらえると思いますが?」

 「それはわかりますが……。」

 私はそう言うが、納得できないようだ。

 「戻ってくる個体がいないかどうかの確認をするために、しばらく待機していましたし、それに……。」

 私は声を潜めて、受付嬢の耳元に顔を近づける。

 「あの子、ミリアルドさんは、戦闘中にホブゴブリンに掴まったのよ。純潔を奪われる寸前に助け出せたけど……落ち着くまでに時間がかかったの……あなたも女ならわかるでしょ?」

 私は小声でそう告げると、受付嬢は納得したように頷く。

 「分かりました、そう言う事情なら仕方がありませんね。」


 「ひょっとしたら、その巣穴、遺跡と繋がっているのかもしれませんわよ?今から思えば、隠し部屋の入り口は、ちょっと変わっていたような気もしますし、そもそも、転移の罠が洞窟の奥にあること自体おかしいですからね。遺跡と繋がっていると思えば納得できますわ。それにゴブリン達が豪華なお宝を持っていた事の理由にもなりますわよね?」

 私はそう告げる。

 あの隠し部屋の状況からすると、これはギルドも国も掴んでない情報でしょうね。

 この情報は、私達が持っていても意味をなさないものなので、この情報をもってして、私達への疑問を逸らすのに使わせて貰いますわ。


 「その様な報告は上がってきていませんが……でもそうですね、その可能性はありますね。早速調査隊をギルドから派遣いたします。有力な情報ありがとうございます……報酬に上乗せいたしますね。」

 私達への尋問じみた質問をしている間にも、依頼の確認や討伐証明の処理をしていたようで、魔種の買い取り額を含めたゴブリン討伐の報酬が支払われる。


 「それでお願いなんですが……。」

 私はシンジ様もしくは姫様からの連絡が届いたらすぐに知らせてくれるようにお願いしておく。

 ついでに念の為と思い、ギルドの緊急連絡システムの登録もしておく。

 これは、依頼した連絡がギルドに届いた際、離れた場所にいたとしても連絡が受け取れるというものだ。

 もちろん受け取るための特殊な魔道具が必要であり、その為利用料もかなりお高くなっている。

 今回の報酬の私の取り分だけではたりなかったので、シンジ様の取り分からも出しておく。

 後で文句を言われてもしらばっくれればいいのです。

 それより、姫様と無事に会えるのであれば、いくら請求されても構わないですわ。


 ギルドで出来る事を終えた後、私達はホームに戻る事にする。


 ◇


 「ちょっと、よく分からないんだが……?」

 ホームに戻ると、アシュレイさんが説明を求めてくる。

 ミリアも同じなのか、ウンウンと頷いている。

 この先の事もありますし、説明は必要でしょうね。


 「シンジ様も言ってましたけど、元々アシュレイさんの持って来た話そのものが罠だったのでしょうね。」

 「そうなのか!?」

 アシュレイさんは本気で驚いている。

 今の今まで疑っていなかったという事実の方が驚きですわ。

 「ギルド内で情報を集めた限りですが、アシュレイさんの聞いた話は『洞窟の奥に遺跡がある』ではなくて『洞窟から奥の方へ行ったところに遺跡がある』じゃないですか?」

 私がそう言うと、アシュレイさんは何やら考えこむと、やがてポンと手を打つ。

 「そうだったかもしれない。でも、大差ないだろ?」


 なんていい加減な……まぁ、今回はこのいい加減さに助けられたとも言えますけどね……。

 「あの遺跡は国が管理している遺跡ですので、許可なく入ることが禁じられています。無許可で侵入、あまつさえ、中のものを持ち出したとなれば、良くてA級犯罪奴隷、下手すれば処刑されますね。アシュレイさんに話をした人、もしくはその裏にいる人が何を考えていたのかはわかりませんが、少なくとも新人冒険者を騙して、そういう結果に誘導しているのは確かです。」

 私の言葉を聞くと二人は青ざめる。


 「こ、コレ、返した方がいいんじゃないかな?」

 アシュレイさんは剣を取り出す。

 「あなたバカですか?」

 思わず手が出そうになる。

 私が何のためにギルドで一芝居撃ったのか分かってないようですね。


 「いいですか、私達が得た物は全てゴブリン達が集めたものです。魔物の巣で発見したものは討伐者に権利があります。……分かりますか?」

 私が言い含めるように聞かせると、二人はウンウンと頷く。

 本当にわかっているんでしょうね?


 「私達はアシュレイさんとミリアさんという新メンバーをパーティに加えた事により、連携の練習がてら森に行ったら、偶々ゴブリンの巣を見つけました。

 かなりの群だったので、一刻も早く討伐しなければと思って、ゴブリン退治をしました。 ゴブリンは予想外に手強く、またホブゴブリンもいたため、私達はピンチに陥りましたが、何とか切り抜けることが出来ました。 

 すべての群を退治した後、ゴブリン達の戦利品を見つけて手に入れました。

 その時に隠し扉を見つけたので、探索しました。

 その先には罠があって、シンジ様と姫様がどこかに飛ばされてしまったので、私達は助けを求めるべく、街へと戻ってきました。

 ……いいですか?これ(・・)が今回の真実(・・)です。」


 二人は納得したと頷く。

 「アシュレイさんは、その情報をくれた人と親しいのでしょうか?」

 「いや、偶々酒場であって意気投合して教えて貰ったんだが……。」

 「大丈夫だと思いますが、2度と接触しないほうがいいでしょう。もし、あちらから接触してきた場合、パーティメンバーが道を間違えて、出たところがモンスターの巣穴だったので散々な目にあった、とか言っておくといいですよ。」

 相手の目的が分からないのが怖い。

 色々な新人冒険者に声をかけている所を見ると、特にアシュレイさんが狙われていたわけではないという事だけが救いですね。


 「という事で、これでパーティは解散ですね。……ミリアも解雇します。今回の報酬でしばらくは暮らしていけるでしょう。後、これは今までの給金です。」

 私は呆然としているミリアに金貨の入った革袋を渡す。

 あの男がため込んでいたものだから問題ないですわ。


 「どういうことだ?」

 アシュレイさんが聞いてくる。

 「どうもこうもないですわ。元々、今回一回限りの約束だったでしょう?」

 私は敢えて冷たく言います。

 これ以上この人たちを巻き込みたくない……というより、責任を負えないって言うのが本音ですね。

 そう考えると、あの男……シンジ様はよくやっていると思います。

 

 「お姉さま……シェラさんはどうするのだ?」

 「私ですか?私は、まぁ連絡を待って、連絡が来たら、迎えに行くかどこかで合流するか決めますよ。」

 ミリアの言葉に私はそう答える。

 ただ待ってるつもりはないけど、今はそんなこと言う必要はないでしょう。


 「私も一緒にいるのだ。……私はシンジに借りがあるのだ。……だからそれを返すまではシンジ様の召使なのだ。」

 ミリアは涙ながらにそう訴えてくる。

 ……はぁ、あんな男のどこがいいんでしょうかね?


 「ミリア、この先はあなたが考えているより、もっと酷い事が起きるかもしれませんわよ?その時、私はあなたを守れないかもしれないわ。……見捨てる事もあるかもしれない。全ては自己責任になるのよ?」

 私は冷たく言い放つ。

 しかしミリアの決意は固かった。

 「大丈夫なのだ。私は勝手にお姉様の傍にいるだけなのだ。」

 ミリアって、こんな笑顔も出来るのね。

 だったら私は、好きにしなさい、としか言えないわね。


 「俺も……このままでは終われない。シンジに、エルさんに助けてもらった恩を返さないで騎士を名乗れない!」

 アシュレイさんがそういうけど……。

 「いいの?場合によっては、その「騎士」にすらなれないかもしれないのよ?」

 「騎士は立場じゃない!心の持ちようだ。……俺はそれをエルさんに教わった。だから、この借りは返さないといけないんだ。」

 はぁ……どうやらここにはおバカが3人そろっているみたいね。

 「じゃぁ、アシュレイさんは2階の部屋を使ってね。」

 私がそう言うと、アシュレイさんが驚いた顔をする。

 「襲われる危険性も皆無じゃないし、色々相談するのには近くにいた方が便利でしょ?」

 この家は、ボロボロではあるが、防犯システムだけはしっかりとしている。

 あの男が、この家を買った時に真っ先に仕掛けたものだ。

 その後も技術が上がるたびに新しいシステムをどんどん取り入れていたから、1個中隊の襲撃ぐらいなら耐えられるだけの備えがある。

 当時はやり過ぎと思っていたけど……こうなると感謝しないといけないわね。 


 「じゃぁ、二人とも明日からしっかりと働いてもらいますから、覚悟していてくださいね。」

 「「わかった(のだ)。」」

 二人の返事がそろう。

 姫様の事が心配だけど……あの男がついているのなら、無事であることは間違いないだろう。

 ……それぐらいの信用はしてますからね、しっかりと姫様を守ってくださいね。

 私は心の中でそう呟くのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ