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ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


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中ボス登場!……中ボスの存在って微妙だよね?

 「オークキング……。」

 その姿を見た俺は思わず口に出してしまう。

 「オークキングって、あの!?」

 俺のつぶやきを聞き咎めたエルは、俺の前方に視線をやる。

 身長は2mを越えているだろう。

 通常のオークより二回りほど大きい。

 鍛え抜かれた身体に、装備されたブレストプレート……生半可な攻撃は通用しないだろう。

 手にする武器は禍々しいオーラを放つ大剣。

 しかし、目の前のオークキングが持つと小剣(ショートソード)にしか見えない。


 通常のオークの上位種である「ハイオーク」の中には、稀に他の個体より能力が突出したものが現れることがある。

 これらの個体は、総じて知恵が回り、他の個体を率いて群のボスとなるため、発見され次第優先的に討伐依頼が出る。

 しかし、討伐されず生き残った個体は、やがて『王の種子』というスキルを持つ場合がある。

 このスキルは、闘気・威圧などの能力強化と同じ効果があり、また種族特性を数倍強化したり、魔法抵抗力や状態異常への抵抗など防御面でも強化されることもある。

 このスキルを持ったハイオークの変異種が「オークキング」と呼ばれ、その脅威度はBランク相当と言われている。

 

 ちなみにモンスターの脅威度のランクは、冒険者ギルドで定められており、同ランクの冒険者パーティが互角に戦えるかどうかが基準になっている。

 この、オークキングの場合はBランク相当なのでBランクの冒険者パーティでないと互角に戦う事すらできない、という事になる。

 冒険者たちは討伐依頼を受ける時に、この脅威度を基準にして自分達で討伐できるのかどうかを判断するのである。

 もちろん、個体差があるのであくまで目安なのだが、流石にDランクの俺達では手に余る相手なのは間違いない。


 「とはいっても、逃がしてくれないだろうなぁ。」

 オークキングは、俺達をしっかり敵として認識しているため、逃げようとした途端に斬り裂かれるのは間違いない。

 同じ逃げるにしても、戦いながら隙を見つける以外に方法はないだろう。


 『氷の槍(アイシクル・ランス)

 エルが先手必勝とばかりに氷の槍を打ち込む。

 氷系統の魔法は水属性の中でも高度な魔力操術が要求される。

 それだけに攻撃魔法としての威力も高いのだが、オークキングの持つ剣の一振りで全てが砕かれる。


 ガキィッッン!

 その隙を狙って斬りかかるが、オークキングは俺の剣を左腕で受け止める。

 防具などないはずだが、俺の剣は腕の皮1枚を切ったところで受け止められている。

 かなり頑丈なのか、俺が非力なだけなのか……。

 そして、右手に持った剣を振り下ろしてくるが、俺はそれをギリギリで避ける。

 そして再度剣を振り下ろすが、オークキングの一振りで、俺の剣は受け止められるどころか、砕かれてしまう。


 まぁ、普通に売っている安物の剣だしな。

 大体、剣士でもない俺が、オークキングみたいな戦士系(ウォーリア)と、真っ向から戦うのが、そもそも間違いだ。 


 『土の壁(アースウォール)

 俺はオークキングの前に壁を出して、動きを阻害する。

 『足元の穴(ピット・ホール)

 『足元の穴(ピット・ホール)

 『足元の穴(ピット・ホール)

 『足元の穴(ピット・ホール)

 続いてその壁の周りの足元に穴を掘る。

 壁を避けたところで、足元を取られてバランスを崩すという、二段構えの罠だ。

 

 予測通り、オークキングは壁を避けたところで、穴に足を引っかけて転ぶ。

 『氷の柱(アイシクル・ピラー)

 そこへすかさず、エルが氷柱の魔法を唱えて、オークキングに落とす。

 流石に、転んだ体勢から躱すことも出来ず、降り注ぐ氷の柱がオークキングの身体を貫いていく。

 「グガァッ!」

 「よし、効いてるぞ!」

 俺はボウガンを取り出し、油の入った小瓶をセットする。

 バシュッ!バシュッ!バシュッ!

 オークキングの身体を油まみれにしたところで、火炎瓶を投げつける。

 「大人しく焼き豚になりな!」

 ガシャッ!ボワッ!

 火炎瓶がオークキングの身体にあたり砕け散る。 

 と同時に火が燃え上がり、オークキングの身体を炎が包み込む。


 「グガァッ!ガァッ!」

 オークキングがのたうち回る。

 『光条線(ソル・レイ)!』

 追い打ちとばかりに、エルの光魔法が放たれ、無数の光がオークキングの身体を貫く。


 「グガァッ!グガァッ!」

 息も出来ず、身体を焼かれ、貫かれ、かなり苦しいのであろう。

 オークキングは滅茶苦茶に剣を振り回し、暴れまわる。

 「クッ、これじゃ狙いが定まらない。」

 今のうちにとどめを刺したいところだが、あれだけ暴れられていては近づくことも出来ない。


 俺は収納から取り出したモノを片手にオークキングの隙を狙う。

 エルの魔法ではとどめを刺すまでには至らないだろう。

 ましてや初級しか使えない俺の魔法ではなおさらだ。

 身体は硬いので、剣での攻撃も無理……というか、さっき砕けてしまったしな。

 だったらどうするか?

 こういう時の定番は身体の中から破壊すると決まっている。

 俺が作成した手榴弾もどき……これを数個、奴の体内で爆発させてやれば流石に息の根を止めることが出来るだろう。

 後は、奴がこっちを向いてくれれば……。

 炎に巻かれて息が出来ないせいか、大口を開けている今が絶好のチャンスなんだが。


 すると、オークキングの身体がこっちを向く。

 チャンスだ!俺は投げ入れるために一歩前に出る。

 「グァッ!」

 その途端奴の拳が振り下ろされた。

 衝撃で身体が飛ばされ、岩肌に強く打ち付けられる。

 こっちが隙を伺っているのを分かっていて、奴はわざと隙を作って見せた……かなり頭の回る奴だ。

 そして、奴は俺の方へ歩いてくる。

 暴れまわっていたせいで、身体を包む炎は大分消えている……イヤ、消すために暴れまわっていたのだろう。

 「グッ……。」

 痛みで身体が動かない……が、これはチャンスだ。

 もう少しこっちへ来い!

 

 オークキングが少し手前で足を止める。

 リーチ差があるので、俺の剣は届かないが奴の剣は届くという絶妙な距離。

 俺が剣を隠し持っているかもしれないと考えて、そこで止まったのだろう。


 「ガァァァッ!」

 オークキングが咆哮を上げながら手にした剣を振り下ろす。

 今だ!

 『空間転移(ディジョン)

 俺はオークキングのすぐ前に飛ぶ。

 そして左手に手榴弾を持ったまま奴の口の中へ突っ込む。

 『着火(ティンダー)!』

 俺はそのまま手榴弾に直接引火する。

 

 ボムッ!


 奴の喉の奥で爆発が起きるが、頑丈な外皮のおかげで外に漏れることは無い。

 その代わり、爆発のエネルギーはそのまま体内を駆け巡る。

 流石にこれには耐えられなかったようで、オークキングは、一度ピクリと痙攣した後、崩れるように倒れ込み、そのまま動かなくなった。


 「シンジ!馬鹿ッ!何やってるのよ……ヒール!」

 エルは慌てて駆け寄ってきて、俺の左腕を取りヒールをかけてくれる。

 かなり焼け爛れて酷い状況だったが、さすがは司教クラスの治癒魔法が使えると噂された元姫巫女の名は伊達じゃなかった。

 それでも、一度の治癒魔法では治らないぐらい酷いものだったが。

 「バカ!馬鹿ッ!バカシンジ!何やってるのよ、ほんとにもぅ……。」

 俺の手を握り、繰り返しヒールをかけるエルの眼には涙がたまっていた。

 「エル、ちょっと待ってくれ!」

 エルが治癒魔法をかけるのに任せていたが、ふと違和感を感じて、ヒールを止める。

 「えっ?どうしたの?」

 エルが、怪訝そうに聞いてくる。

 エルのヒールのおかげで外傷はかなり良くなっているのだが、中……具体的には砕けた骨に違和感を感じる……まっすぐじゃなく適当にくっついている感じがするのだ。


 そう言えば、折れた骨をそのままにしてヒールをかけると、変な風に骨がつながるって学園で聞いたことがある。

 正しい治し方は、添え木を当てて真っ直ぐにし、それに沿うように骨を繋ぐこと……。

 俺はエルにそう説明をする。


 「添え木って言っても……。」

 エルはあたりを見回す。

 周りの樹木はオークキングが暴れたせいで、焼け焦げたり、潰れたりしている。

 「あれでいいよ。」

 俺は目についたものを指さす。

 オークキングが持っていた剣だ。

 「んー、まぁ無いよりマシね。」

 エルは剣を拾ってくると、俺の腕に添える。

 「俺も手伝うよ……剣に沿って真っすぐにな。」

 俺も、エルの手の上に、自分の右手を重ねてヒールをかける。

 すでに、変にくっついた感じがしている部分があったので、それを一旦離して、繋ぎなおすイメージを送り込む。

 

 ……添えられている剣が目に入る。

 そう言えば、手の中に名剣を仕込んでいるっていう設定のファンタジー小説があったっけ。

 あれは確か、普段は剣が身体の一部になっていて、相手の剣を腕で受け止めるんだよな。

 それで、相手が「なにぃ!」と驚いたところで、剣を顕現させる……うーん、厨二病心をくすぐる設定だよな。

 

 そんな事を考えていたのがいけなかった。

 「ちょ、ちょっと!」

 エルの声で我に返る。

 見ると、オークキングの剣が俺の腕と融合している……アッと思う間もなく、剣は俺の腕の中に取り込まれて姿を消す。

 「大丈夫?」

 エルが心配そうに見上げてくる。

 俺は腕を振ったり回したり、手を握ったりするが問題なさそうだ。

 ついでにエルの胸を揉んでみるが、しっかりと感触もある。

 「何すんのよっ!」

 当然エルに、思いっきり叩かれた。

 

 「イヤ、手の感覚があるのかと思って……。」  

 「バカ……。」

 今の所、何も変わった感じはしないが、唐突に頭の中でイメージが閃く。

 

 『大喰らいの長剣(イーターソード)

 ……左腕に融合、自在に取り出せる。

 ……体内にある時は左腕を使ってスキルの使用可能。

 ……使用者の魔力及び能力付与にによって成長。


 『能力喰らい(スキルイーター)

 ……。

 ……大喰らいの長剣(イーターソード)の固有スキル。

 ……喰らう事によって能力が強化・付与される。

 ……使用者の魔力量・属性値により限界がある。

 ……喰らうモノによって能力が変質することもある。


 「……ンジ……シンジってばっ!」

 エルの声で我に返る。

 「いきなり黙り込んでどうしたのよ!やっぱり、何か変な影響が?」

 エルが焦ったように言ってくる。

 「あぁ、ゴメン。……なんか、あの剣を俺が取り込んだせいで、おかしなことが起きたみたいだ。」

 「大丈夫なの?呪われたとか?」

 俺の返事に、エルが泣きそうな顔で聞いてくる。

 「あぁ、大丈夫だよ。」

 俺はそう言って、立ち上がると、左腕に右手を添えて、剣を取り出してみる。

 イメージとしては腕の中から何かを引っ張り出す感じだ。

 右手に何かの感覚が生まれたので、それを握りこみぐっと引き抜いてみる。

 ……俺の右手には、オークキングが持っていた剣……『大喰らいの長剣(イーターソード)』が握られていた。

 

 俺はそのままヒュンッ!ヒュンッ!と、軽く振ってみる。

 ……凄く軽い。

 俺は、オークキングの所まで行って首を切り落としてみる。

 スパッ!

 …………あっさりと斬れる。

 死体とはいえ、オークキングの身体はかなり堅いはずなのだが……。

 俺が考え込んでいると、斬り落としたオークキングの頭が剣に吸い込まれていく。

 と同時に、俺の中に、何か得体のしれないものが入り込んでくる感覚に襲われる。

 思わず剣を手放すと、剣は光の粒子となって俺の左腕に吸い込まれていく。

 しかし、身体の中を這いずり回るような感覚は消えない。


 「シンジ!大丈夫なの!」

 エルが心配そうに俺を見上げてくる。

 「だ、大丈夫だ……。」

 俺はそう言うが、どう見ても大丈夫じゃないように見えるらしい。

 「とりあえず、座って。」 

 俺はエルに促され、その場に座り込む。 

 その俺の身体をエルが擦ってくれる。

 それで気分が良くなるわけでもないが、エルのその心遣いがぐっと胸に来る。


 しばらくすると、気持ち悪さも収まってきたが、何か足りないという感覚がこびりついていた。

 そして、何故か、オークキングの死体が気になってしょうがない。

 この感覚は何だろうか……。

 俺は感覚に導かれるまま、オークキングの死体へ近寄り、左手をあてる。

 すると、オークキングの身体が光の粒子となって俺の左腕へと吸い込まれていく……まるで、俺の左手がオークキングを喰ったみたいだ。

 「あぁ、そうか、これが喰らうって事か……。」

 オークキングの死体は何もなかったかのように掻き消え、後には拳大の魔種(シード)だけが残されていた。


 「シンジ……何が起きたのよ?」

 「ウン、よくわからないんだけどな……。」

 俺はエルにわかっていることを説明する。

 オークキングの剣が『大喰らいの長剣(イーターソード)』というもので、喰らった相手の能力を取り込む能力がある事。

 そして、俺がその剣を取り込んだことによって、俺自身にそのスキルが備わったみたいだという事。


 現に、オークキングの死体全てを取り込んだことにより、俺自身に「王の種子(SEED)」のスキルが備わったらしい。

 空間魔法を理解した時と同じ感覚で、突然スキルの内容が脳裏に「閃いた」のだ。


 そして『大喰らいの長剣(イーターソード)』は斬り裂いた相手の魔力を吸い取る『|魔力喰い』に変質した。

 変質したと言っても『能力喰らい』は消えていないので実質は強化されたと言った方がいいかもしれない。


 「シンジ……大丈夫なの?人間には許容限界っていうのがあるのよ?」

 「その事なんだが、この能力は使用者によって限界が決まっているらしいから、許容範囲を超えることは無いと思うよ。」

 「ならいいんだけど……もしおかしな感じがしたら直ぐ言うのよ。左腕を切り落としてでも止めてあげるから。」

 「あぁ、その時は頼むよ。……それより、後始末をして帰ろうぜ。」

 俺は、そう言って立ち上がり、後処理を手分けして行う事にした。


 外にいた3匹のオークの内、1匹の死体を左腕で吸い込んでみたが、何の変化もなかったので、残りの2匹の亡骸を収納に入れる。

 オークの肉は高く売れるのだ。

 その後洞穴に入ってみるが、全てのオークは焼け焦げていた。

 仕方がなかったとはいえ、ちょっと勿体なかったかもしれない。

 俺は、洞穴の中で無事に残っていた財宝と、オークの魔種(シード)を回収して表に出る。

 そこにはすでにゴブリンたちの魔種(シード)を回収して戻ってきていたエルの姿があった。

 「纏まっていたから楽だったわ。」

 そう言って、俺に魔種(シード)が詰まった革袋を渡してくるので、俺はそれを収納へとしまう。

 「じゃぁ、帰るか。予定より時間がかかったから、レムたちも心配してるぞ。」

 「そうね、早く帰って、レムちゃんをギュってしないとね。」

 俺達はミュウの村へ戻り、ゴブリンとオークを退治したことを伝える。

 村長は大変喜び、もう遅いからと、村に泊まっていくことをすすめてくれた。

 しかし、エルが少しでも早くレムに逢いたいとごねるので、村長には丁寧にお断りし、シャンハーに帰ることにした。


 ◇


 「オークキングですか?」

 俺の報告を聞いて受付のお姉さんが首をかしげる。


 ミュウの村を出て急いで帰ってきた俺達だが、結局途中で野営をすることになり、街には入れたのは火もかなり高く昇ってからだった。

 取り急ぎ報告だけは済ませようとギルドに直行したのだが、受付のお姉さんが「オークキングがいた」という事を信じてくれず、手続きが止まっている。

 

 「オークキングの部位とかは持ってきて……ないですよね?」

 「あぁ、色々あって、死体は無くなった。」

 「だとすると、証明できるものがありませんので……。」

 「あー、もう!この魔種(シード)で分からないのっ!こんな大きなの、普通のオークじゃないのは一目瞭然でしょ!」

 何度か繰り返された問答に飽きたのか、エルが唸る。

 「えぇ、確かに普通のオークの物じゃないのは分かりますが、これだけではハイオークの物なのか、オークキングの物なのかの判別がつきませんから。」

 それに……と言いかけてお姉さんが口ごもる。

 まぁ、本当にオークキングが出たのだとしたらDランクの俺たち二人で倒せるわけがない、と思っているのだろう。

 ハイオークですら、群れていればCランクの案件になるからな。


 「もう、どうでもいいからさ、手続き終わらせてくれないか?オークとゴブリンの群れを討伐してきた。それで依頼完了でいいだろ?」

 「しかし……。」

 俺がさっさと終わらせるように言っても、受付のお姉さんは納得してくれない。

 俺達の言う事が本当だった場合、ギルドが責任を負う羽目になるからだ。

 「うー!」

 エルがお姉さんを睨みつける。

 「分かりました……。オークとゴブリンの群れは、ハイオークの変異種に率いられていた……ということでいいですか?」

 このままではらちが明かないと思ったのか、エルの顔に恐怖したのかは分からないが、結局お姉さんが折れてくれる。

 「あぁ、それでいいよ。」

 「では、ギルドカードの提出をお願いします。」

 俺とエルはギルドカードを出す。


 「……ハイ、これで手続き終了です。でも、ランクはまだ上げないんですか?」

 カードを返しながらお姉さんがそう聞いてくる。

 俺達はすでにCランクにあがる為の実績を積んでいるので、手続きすればすぐにでもCランクを名乗れるのだが……。

 「イヤよ、Cランクにあがったら採集依頼受けれなくなるじゃないのよ。」

 ……そう、エルがレムと一緒に採集に行きたいがために、Eランクの採集依頼を受けることのできるDランクに留まっている。

 エルの言葉を聞いて、お姉さんが困った顔をしている。


 「エル、そんな事より、手続き終わったんだから早く帰ろうぜ。」

 「そうね、早く帰りましょ!」


 まだ、俺達がシャンハ―に来て2か月もたっていないのだが、自然と「帰る」という言葉が出てくるのが不思議な感じがするが、悪い気分ではない。

 帰るところがあるっていうのは、こんな暖かな気持ちになれるんだという事を、初めて知った。

 いつまでも、こんな時間が続けばいい……エルの笑顔を見ると、そう願わずにはいられなかった。


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