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ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


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普通の装備と呪われたチート装備……どっちを選ぶ?

 パクッ……モグモグ……。

 ウン、味が染みていておいしいな。

 ぷちっ、ぷちっ……

 エルの方から、何か音が聞こえるけど……。


 「あーん……。」

 パクッ……もぐもぐ……これはちょっと硬いかな?

 ぷちっ、ピシッ!


 「もっと食べるのだ、アーン……。」

 「あーん……。」

 「いい加減にしなさいっ!」

 エルの特大の雷が落ちる。

 「と言われてもだなぁ……俺だって腹は減る。」

 「そうなのだ。シンジ様の世話を焼いて何が悪いのだ?」

 俺とミリアの言葉に、エルがさらにキレる。

 「目の前でイチャイチャイチャと!場所をわきまえなさいっての!大体なんでミリアがシンジの世話を焼いてるのよ!それも、あ……あーん……だなんて!」

 「私はシンジ様のメイドなのだ。シンジ様が動けないのだから世話を焼くのは当たり前なのだ。」

 ミリアは、エルが何故怒っているかが分からない、と言うような顔で言う。

 「メイドだからって、節度というものがあるでしょうがっ!」

 「でも、シェラ御姉さまが……

 『いいですか、ミリアさん。メイドたるもの、ご主人様に誠心誠意、粉骨砕身に尽くさなければなりません。お食事の時は、手ずから食べせるのはもちろんの事、湯浴みの時は自らの身体を使って丁寧に磨き上げ、ご寝所では主の求めるままに身体を差し出す……これが神なるメイドというものです!だというのに、エル様は……エル様はー!』

 ……って言ってたのだ。」


 シェラ……エルの事好きすぎだろ……。

 「そう……シェラが……。」

 エルの背後から炎が立ち上っているように見える。

 「シェラには後でキツ―――――く言い聞かせて置くわ。だから、あなたもそんなことしなくていいのよ?」

 ここにはいないが、シェラが戻ってきた時には巻き添えを食わないように祈ろう……今の俺は逃げようにも逃げられないんだから。


 今、俺の左手は床を抑え、右手で魔法を操っている所だ。

 モチロン遊んでいるわけではない。

 今、この左手を離すとトラップが発動して何が起こるか分からない、という状況なのだ。

 時間をかけて探索魔法をかけた結果、このトラップの核になる物が地下10Mの所に埋まっているのがわかったが、ここの床が硬く普通の道具では傷一つつかない。

 なので、俺の空間魔法の次元斬(スラッシュ)を使って掘り進めているのだが、如何せん10㎝しか掘ることが出来ず、しかも、筋のような傷では意味がないので、少しずつずらして幾重のも傷を重ねて広げながらの作業なので、全然進まない。

 作業を始めてから5時間半……いいかげん集中が切れそうだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「これはすげぇ!当たりだよな?なっ?」

 目の前の光景に、アッシュが子供の用に目をキラキラさせながらはしゃいでいる。

 無理もない、俺もテンションが上がっている。

 「見ろよ!この鎧一式、魔法かかってるんじゃないのか?」

 アッシュが指さす方を見ると、フルプレートが飾られている。

 被っている埃を拭うと、下から白金の輝きが見える。

 「ミスリル製……いや、メッキか?」

 「ホントかよ!メッキでも、すげぇ値が付くぜ!」

 「それより、お前が求めていたのはこれだろ?」

 そう言って、鎧と一緒に飾られていた大剣を投げる。

 「おわっ、とっと……いきなり投げるなよ……って、これ魔法の剣か!?」

 「詳しくは鑑定してもらわないと分からないけどな、かなり強力な魔力を感じる。」

 「おぉー!テンション上がってキター!もっと探すぜー!」

 そう言ってアッシュは更に奥の方を探し始める。


 俺は一度周りを見回してみる。

 ここは宝物庫のようだな。

 アッシュの言うとおり当たりだったな……てっきり、騙されていると思ったんだけどな。

 

 ゴブリンの巣穴になっていた洞窟の奥で、遺跡の入り口を見つけて、奥へと潜って約半日。

 最初は何の変哲もない通路が続いていて、ようやく広い所に出たと思ったら何の変哲もない広間だった。

 作りからして、古代魔法王国時代の貴族の屋敷だったと思われ、通ってきた通路はどうやら非常用の隠し通路だったらしい。

 しばらく探索したが目ぼしいものは残っておらず、アッシュががっくりと項垂れた時、俺の魔力探査の端に、引っかかる反応があった。

 俺は、アッシュにその事を伝え、そのあたり一帯をひたすら掘らせた。

 その甲斐あってか、アッシュがネを上げる頃にようやく隠し扉が見つかり、そこをくぐったら、この宝物庫に出たというわけだ。


 この宝物庫には、残念ながら宝石や金貨など換金性の高いものはなく、美術品や装備などが数多く残されている。

 たぶん、この屋敷の主は宝石など直ぐ換金できる物だけを持って逃げだしたのではないだろうか?

 魔法のかかった装備などは、当時はありふれていて、それ程の価値は無かったのかもしれない。


 俺はとりあえず、有益そうなアイテムや武具などを収納していく。

 アッシュやミリアが使えそうなものは、奴らが持っていかせればいいだろう。

 その為に収納袋をわざわざ用意して渡してあるのだから。

 まぁ、俺が言わなくても、手あたり次第収納袋に詰め込んでいるみたいだけどな。


 とりあえずここはアッシュたちに任せて隣の部屋に行く。

 そこではエルが色々物色していた。

 「何かいいのでもあったか?」

 「あ、シンジ、これ見てよ。」

 エルが差し出してきたのは、今にも崩れそうな古びた本だった。

 「古代文字で書いてあって、分からないところが多いんだけど、これ、なんかの研究資料よね?」

 俺はエルが差し出した本をぱらぱらとめくってみる。

 ……

 ……

 ……。

 「エル、これ取りあえずもらっていいか?」

 「いいけど、何が書いてあったの?」

 「簡単に言えば『付与の術』についてだな。学園で聞いたのとは全く違う視点から書かれていてちょっと興味がある。」

 「へぇー、気に入ったなら持っていけばいいよ。その代わりあとで教えてね。」

 「あぁ。まだ色々ありそうだな。」

 俺はエルと一緒に部屋の中を物色する。

 どうやらここは秘密の研究施設だったみたいで、小型のちょっとした器具なんかも置いてあった。

 中でも俺の目を引いたのは、携帯用溶鉱炉と携帯型作成キットだ。

 これを持ち歩けば、どこでも簡単な器具や武具などを作ったり修理したりできる。

 俺はこういう「持ち運びできる便利グッズ」と言うのに昔から目がなかった。

 なので、早速収納にしまい込む。

 溶鉱炉の傍には作業の為の物と思われる、インゴットや鉱石などが積まれていたので、それも収納しておく。

 見た事のない物が多かったが、後でゆっくり調べればいいだろう。


 ◇


 「いやぁ、大量だぜ。シンジからもらった収納バックがあって助かった。」

 「そうなのだ!これを見るのだ!」

 そう言っておもむろに服を脱ぎだすミリア。

 「ちょ、おまっ、いきなり……。」

 「何を言ってるのだ?それより見て欲しいのだ。」

 ミリアが服を脱いでみせたのは極薄の鎖帷子。

 帷子と言うより、金属で出来た布で作った服と言った方がいいかもしれない。

 体にぴっちりと張り付いたその鎖帷子は、ミリアのボディラインをしっかりと浮かび上がらせる。

 「わ、分かったから、上を着てくれよ。」

 流石に直視できないのか、アッシュが、ミリアにそう言う。

 「着ている感じがしないぐらい軽いのだ。しかも、凄く防御力が上がった気がするのだ。」

 「そうね、その魔力の感じだと、耐刃加工と、魔法抵抗力増の魔法がかかっていると思うわよ。」

 ミリアの言葉に、エルがそう告げる。


 「エルフィーちゃん、これは?」

 アッシュが、自分が着ている装備について訊ねる。

 「ちょっと待ってね……。」

 エルがアッシュの装備に手をあてて瞑想する。

 「うーん、詳しくは分からないけど、強力な火属性の耐性があるわね。ここまで強力だと、ひょっとしたら「火属性無効」かもしれないわ。後は軽量化とステータスアップの魔法がかかってるかな?私にわかるのはこれくらいだけど、まだ何かあるかもしれないから、しっかりと鑑定してもらってね。」

 エルの言葉に、アッシュが飛びあがらんばかりに喜ぶ……いや、実際に飛び跳ねていた。

 「と言うか、お前ら、呪われた装備かもしれないのに、よく平気で装備したな?」

 俺の言葉に、喜んでいた二人の動きが止まる。

 「ひょっとして、その可能性に気づいてなかったとか?」

 俺の言葉に、コクコクと頷く二人。

 「取りあえず、勝手に装備するのはやめておけよ。」

 

 「シンジは何かいいもの見つけた?」

 「いいものかどうかは分からないんだけどな……。」

 俺はそう言って、収納の中から一振りの剣を出す。

 分類としてはブロードソードと呼ばれるものだ。

 見た目は普通の剣なのだが、刀身が、角度によっては金色がかって見える所と、柄に埋め込まれた魔石および、その周りに空いている穴が少し気になった。

 「ふーん……特に魔力は帯びていないようだけど……。」

 俺にはわずかな魔力が感じられるのだが、エルにはわからないみたいだ。

 「この柄の所の穴……ほら、こうすると六芒星になるだろ?」

 そう言って俺は穴と穴を線で結んでみせる。

 「そう言われればそうね。」

 「後、この細かい紋様に見える部分も古代文字っぽいし……これ何かの魔法陣じゃないかと思うんだよ。」

 「うーん、そうかもしれないけど……何かが分からないんじゃね。」

 「まぁ、ゆっくり調べてみるさ。」


 俺達はそんな話をしながら、食事をしゆっくりと休んでいた。 


 ◇


 「この奥にも隠し部屋があります。」

 壁を調べていたシェラがそう言う。

 この遺跡に入って三日が過ぎようとしていた。

 そろそろ引き上げようかと言う所で、この発見だ。

 部屋の様子によってはもう2~3日はここに居ないといけないかもな。


 「開けますね。」

 シェラが隠し扉を開ける。

 「わぁー!」

 エルが感嘆の声を上げる。

 目の前に広がっていたのは、リビングルームだった。

 応接セットに棚に飾られた食器類や宝飾品。

 埃をかぶって入るが、かなりセンスのいい作りになっていた。

 「隠し部屋と言うか、こっちが表で、今までいた所が隠し部屋だったんだろうな。」

 アッシュがそう呟く。

 たぶん、アッシュの言う通りだろう。

 向こう側のドアを開けると、たぶん最初の部屋につながると思う。

 「あっ!」

 俺が、この遺跡の作りについて考察していると、驚いたエルの声が聞こえる。

 「どうした?」

 エルを見ると、ピクリとも動かず、青ざめた顔でこっちを見ている。

 俺は慌てて、エルの元へ駆けよる。

 「ゴメン……やっちゃったみたい。」

 エルが足元を指さすとエルの右足の下から淡い光が漏れている。

 どうやら地雷式のトラップのようだ。

 このままエルが足を離すと、トラップが発動する仕掛けのようだが……。

 「エルそのまま動くなよ……皆は離れて!」

 俺はエルの足元のトラップの魔力を調べる。

 細かい事は分からないが、魔力の流れを辿れば多少の情報を得ることが出来る。

 ……学園で習ったことがこんなところで役立つとはね。

 向こうの世界では、学校で習った事など、社会では役に立たないってよく言われてるけど……実際には、何が役に立つか分からないもんだ。


 取りあえず調べてわかった事は、荷重式ではなく接触式のトラップだという事。

 荷重式の場合、トラップにかかる荷重が変わるとすぐ発動するが、接触式の場合、は、何かが接触していれば問題ない……とはいっても、魔力が関係するものだから適当なモノを置けばいいってもんじゃないけどね。


 「よし、エル。そっと足を上げて……。」

 俺はエルの足元に左手を滑り込ませ、手のひらから微弱な魔力を流す。

 エルの魔力パターンに似せてあるので、これでトラップを騙せるはず。

 エルがそっと足を退ける。

 一瞬何かがカチッとはまる音がしたが、しばらく待っても何も起きないので無視することにした。

 「これでエルは自由に動けるだろ?」

 「でも、シンジが身代わりなんて……。」

 「エルが身動き取れないよりはいいさ。それよりこのトラップを解除するぞ。」


 地下10m位の所に、このトラップの核が埋め込まれているので、それを無効化すれば、このトラップは解除できる事までは確認できたので、早速掘ってみることにしたが、とても硬くて、並の道具では掘ることが出来なかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「そんなこと言われても困るのだ……。」

 俺が、なぜこうなってしまったのか、を思い出している間も、二人の言い争いは続いていた。

 どうでもいいけど、もう少し食べたいんだけどなぁ……あのパン。


 「あ、ひょっとして、エルとシンジ様は恋仲だったりするのか?それなら申し訳なかったのだ。」

 「そ、そんなことないわよっ!誰がこんな奴と!」

 ミリアの言葉を、エルが真っ赤になって否定する。

 別にいいけど、そこまで強く否定されると、なんか傷つくなぁ……。


 「そうなのか?……だったら問題ないのだ。」

 ミリアがにっこりと笑って、俺の食事を続けようとする。

 「だからっ!」

 エルが大声でミリアを止める。 

 「うーん、エルが難しいのだ。……そんなに言うなら、エルもやればいいのだ。」

 そう言って、お椀とスプーンをエルに渡す。

 「えっ、ちょっ……私は別に……。」

 「やらないならいいのだ。」

 「やらないなんて言ってないでしょ!」

 お椀を下げようとするミリアの手から、奪い取るエル。


 そして、スプーンで掬うと……。

 「べ、別に深い意味はないんだからねっ。こうなったのも私に責任の一端はあるわけだし……そう、責任を取ってるんだからねっ。」

 そう言いながら俺の口にスプーンを突っ込む。

 って、ちょっ、おまっ……。

 「熱っ!」

 冷まされないままツッコまれたスープは当然熱いわけで、俺は反射的に、口を手で押さえる。

 ……()で?

 俺の手が離れた床はぼーっと光を帯びている。

 ヤバい!

 光の上にはエルがいる。

 俺はエルを突き飛ばすべく、光の中に突っ込むが、エルは光に捕らわれたのか全く動けないでいる。

 「シンジ様!」

 ミリアが叫ぶ。

 「来るな!シェラとアッシュに伝えろ!ギルドに報告しろと!」 

 俺はミリアにそう言い残すのが精一杯だった。

 次の瞬間、俺とエルは光に包まれる。

 「シンジ様――――!」

 ミリアの声が遠くで聞こえた。


※ いつも読んでいただいてありがとうございます。

 私事で大変恐縮ですが、事故があり、しばらく更新が滞るかもしれませんのでご容赦ください。

 少し短くてもなるべく更新できるように心がけます。

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