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美人局って怖い!?

 「……という事で金が必要だ。」

 「えっと、へーかは私達の身体を売ってお金を稼げと?」

 「鬼畜です!鬼畜の所業ですよっ!」

 ……金が必要と言っただけで、何故ここまで言われなければならないのだろうか?

 俺は鬼畜だ、悪魔だ、と叫ぶシャナとティナを横目で見つつ、アイリスに視線を送る。

 「二人とも、シンジ様のお話を聞きましょうね。」

 「「ハイっ!」」

 アイリスが一言言っただけで、二人は姿勢を正す。

 一体どんな調教をされたんだか……。


 「まぁいい。取りあえずシャナ、ティナ、南アルティアとシャマルで余っている物、不足している物って何かわかるか?」

 「南アルティアは全体的に不足している物ばかりですね。余っていると言えば『砂漠の果物(デザートフルーツ)』位でしょうか?」

 「シャマルはやっぱり鉱石ですねぇ。特に質のいい黒曜石が採れる鉱山がたくさんありますから。不足している物と言えば……食料ですね。」

 俺の質問にシャナとティナは淀みなく応える。

 流石に自分たちの国の事はよく分かっているという事か。


 「さて、ここに金貨10枚ある。これをお前たち二人で増やしてもらいたい。」

 「増やすって、どうやってですかぁ?」

 「賭け事ですか?私弱いんですけどぉ?」

 「違う、お前達には『交易』をやってもらいたい。まずはこの金貨でシャマルの黒曜石と南アルティアの砂漠の果物(デザートフルーツ)を買えるだけ買うんだ。そうしたらまずはアシュラム王国に向かうんだ。あそこは魔術具生成の為に黒曜石の需要は高いからな。王都で黒曜石を売り、旧ミーアラント領で砂漠の果物(デザートフルーツ)を売る。そうすれば金貨15枚ぐらいになっているはずなので、それで海産物を買えるだけ買いこむんだ。その後はカストール領へ赴けば買いこんだ海産物は金貨20枚で売れる。後は農作物を買い込み、シャマルと南アルティアで売ればいい。両国合わせて、今の相場なら金貨23枚ぐらいにはなるだろう。」

 俺がそう説明すると二人は感嘆の声を上げる。


 「へーか、天才ですか!」

 「素晴らしいですぅ!」

 「今のは練習用のルートだ。ポイントは街ごとの相場だ。どの町で何が安く、何が高く売れるのかを調べながら街を移動するといい。次からは自分たちで行き先を決めてもらうからな。」

 「……私達に出来るでしょうか?」

 「道中も心配だしね……。」

 不安そうな二人だが、俺はあえて明るく言う。

 「お前らなら大丈夫だよ。それにメイド隊の中から5人程一緒に行ってもらうつもりだ。道中の護衛もかねて彼女たちの演習に丁度いいらしいからな。余り深く考えず気軽に楽しんで来い。もし損失があっても身体で払ってもらうだけだからな。」

 「「えっ!」」

 二人して両腕で自分の胸元を抱え込むようにして隠す。

 「まぁ、そう言うことにならないように頑張ってくれ。」

 俺はそう言って、交易に必要な準備を含めて三日後に出発する様にと伝えて解散する。


 「……シンジ様も人が悪いですわ。」

 アイリスがくすくすと笑う。

 「別に騙しているわけでもないし、彼女たちに期待していることもホントだよ。」

 「そうですわね、ただ言ってない(・・・・・)だけで……シンジ様はいつもそうですから……もぅ。」

 アイリスが拗ねたようにそう言ってくる。

 「とにかく、あの子達のチェイサーを頼むな。俺は馬車を用意しておくから。」

 「はい、わかりましたわ。」

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「へーかって、気前がいいよねぇ。こんないい馬車をポンってくれちゃうし、この収納バックもくれるし……マジでへーかの愛人目指そうかなぁ?」

 「確かにねぇ。でも愛人目指すにしてもこの任務を無事に終えないと、愛人どころか娼館行きになるかも。」

 「まさかぁ……へーかがそんなことするわけないよ。」

 「陛下はしなくてもアイリス姐さんならやりかねないよ?」

 シャナの言葉にティナの身体が硬直する。

 「た、確かに……。」

 

 「へぇ、アイリスちゃんって大人しくて可愛い子って感じだけど、そんなに怖いのだ?」

 「っと、ミリアルドさん、シィーっです!誰が聞いてるか分からないんですよ。」

 「そうですよ。もしこんなことを話してるって知られたら……。」

 慌ててミリアの口を塞ぐティナとシャナ。

 「そんなに慌てなくても大丈夫なのだ。」

 ミリアが笑いながらティナとシャナを宥める。

 

 「ミリアルドさんはへーかの事よく知ってるんですよね?」

 「ミリアでいいのだ……シンジ様の事は言うほど知ってるわけではないのだ。」

 「そうなんですか?でも昔馴染みで大切な仲間だって陛下はおっしゃってましたよ?」

 その言葉を聞いたミリアは大きくため息をつく。

 「ホント、ありがたい話なのだぁ……。」

 そしてミリアはポツリポツリと話し出す。


 「シンジ様に出会ったのはグランベルクの学園で、色々困っていた所をお世話になって、危ない所を助けてもらって……返しきれない恩があるのだ。」

 ティナとシャナは黙って聞いている。

 「シンジ様はね、一見優しそうに見えて……ううん、優しいのは確かなんだけど、その優しさは一部の人だけに向けられているのだ。それ以外の人に対しては……激しいまでに冷酷な人……。」 

 そう言ってシャナとティナに視線を向けるミリア。

 「あなた達の事はクリス様からも聞いているのだ……ゴメンね。」

 「何故謝るのですか?」

 突然頭を下げるミリアにシャナとティナは動揺する。

 「ウン、あなた達の今の境遇はクリス様にも一因があるからね。」

 「あー、でも元をただせばウチの父親が悪いんだし。」

 ティナが困ったように言う。

 シャナもティナも、シンジからどうしてこうなったのかという説明は受けている。

 その上で、自分で選んで今ここにいるのだから、今更謝ってもらっても……と言う感じではある。

 何より、ティナにとっては父親ではあるが殆ど顔を合わせた事もなく、愛情と言えるような感情を持っていなかった……その男の所為で自分が酷い目に合い、シンジはそれを救ってくれた恩人であり、感謝こそすれ恨む気持ちなど一切なかったのである。

 なので、ミリアに頭を下げられてもどうしていいか分からない、と言うのが正直な気持ちだった。


 「うーん、じゃぁその件はここまでにしておくのだ。それでシンジ様なんだけど……私は正直言って驚いているのだ。」

 「驚く?」

 「ウン、シンジ様が、私やあなた達にあそこまで心砕いてくれるとは思ってもいなかったから、ちょっとびっくりしたのだ。」

 ミリアの言葉に二人は顔を見合わせる。

 「えっ、でもへーかっていつもあんな感じですよ?」

 「そうそう、口は悪いけど過保護って言うか……。あんな感じで何時も良くしてくれますよ?たまにボケて忘れられることもありますが……。」

 「それが意外なんだよ。」

 二人の言葉にミリアが首を振る。


 「さっきも言ったようにシンジ様はね、自分の中で身内認定した人以外にはとことん冷たいのだ。……あの頃のシンジ様はエルちゃん以外は赤の他人、極端な言い方をすればエルちゃん以外はどうなっても気にしないという人だったのだ。以前私を助けてくれた時も「私だから」助けたんじゃなくて「エルちゃんの友達だから」助けてくれたのだ。……だから、再会した時は吃驚したし、今も吃驚してるのだ……あの優しい顔をエルちゃん以外にも向けられるようになったんだなぁって。」

 ミリアの話をシャナとティナは黙って聞いていた。

 そんな二人に対しミリアは優しく告げる。

 「だからね、あなた達は安心してこの任務をやり遂げるといいのだ。身内認定されているあなた達なら、万が一何があっても、きっとシンジ様が助けてくれるのだ。」


 ミリアの言葉に二人は顔を見合わせる。

 「身内認定って言っても、私達結構ひどい目に合ってますよ?」

 「……ねぇ?」

 二人の言葉にミリアは笑いだす。

 「そう言う事も含めて、シンジ様に愛されてるのだ……そんなものを貰っておいて、分からないとは言わせないのだ。」

 ミリアは二人の胸元を指さす。

 二人は首から下げているペンダントを手に取り、お互いの顔を見合わせる。

 このペンダントトップに嵌め込まれている石は、シンジが色々と付与した魔石だ。

 相互通信、防護壁の展開、収納バックの機能が付与されていて、まさしく、シンジが信頼していなければ渡してもらえないものだ……帝国内でもこの手のアイテムを貰っている者は少ない……宰相のゲイルでさえ持っていなかったりする。


 「でも、それを言うならミリアさんもですよね?」

 シャナがミリアの首にかかっているペンダントを指さす。

 「そうなのだ……でもアシュレイがやきもちを焼いて困るのだ。」

 そう言って頬を染めるミリアを見て「ゴチソウサマ」と心の中で呟く二人であった。


 ◇


 「じゃぁ二人とも頑張るのだ。」

 「はい、ミリアさんもお気をつけて。」

 サウスサイドの首都になるアーシェの街でミリアを降ろすと、そのまま南アルティアの集落に向かう。

 まずはここで『砂漠の果物(デザートフルーツ)』を買い込むのだ。

 『砂漠の果物(デザートフルーツ)』はそれほど長持ちするものではない。

 なので近隣諸国以外では口にすることは少ない、ある意味希少な果物だ。

 その為希少価値と言う意味では価値が高いと思われるが、食した事の無い未知なる食べ物という事で忌避される恐れもある。 

 だから売り方に工夫しないといけない、とシンジは二人に念を押していた。


 「どれくらい買いこむの?」

 「うーん取りあえず金貨三枚分ぐらいかなぁ?シェラさんの話では旧ミーアラント領で1.5倍から2倍ぐらいで売れるって話だけど、へーかの言う通り知名度がない分、売れない可能性も考えるとあまり冒険できないよね?」

 「そうだね、今回は認知度を上げる事を優先して、うまくいったら次回大量に売り捌けばいいよね。」

 金貨三枚分とは言えかなりの量になり、普通であれば馬車の2~3台分にはなるが、ここで活躍するのがシンジお手製の収納バック。

 馬車数台分の容量が入るうえ、中での時が止まるので、足の速い『砂漠の果物(デザートフルーツ)』も、新鮮なまま現地へ届ける事が出来る。

 「商人さん泣かせだよねぇ。」

 商人が見たら喉から手が出るくらい……それこそ殺してでも奪いたいと思うような逸品だ。

 「私達以外使えないって言うけど……それがそのまま安全に繋がるわけじゃないってへーかは分かっているのかなぁ?」

 自分で使えないなら、使える者に使わせればいい……その為にあらゆる手段を用いる輩もこの世の中にはたくさんいる。

 「……大丈夫だよね?いざとなったらへーかが助けてくれるよね?」

 ティナは誰ともなしに、そう呟いた。


 ティナの不安は、その数日後、シャマルで黒曜石を買い込んでアシュラム王国に向かう道中の森の中で的中することになる。


 ◇


 それは、森の中での小休止中に起きた。

 「ティナさん、シャナさん、中央へ!」

 メイド隊の隊長がそう指示する。

 何が起きたのか分からないまま、二人は指示に従う。

 二人を守る様に三人のメイドが輪を作る。

 あとの二人はどこへ?と考える間もなく、盗賊が姿を現した。


 「えっへっへへ……上玉ぞろいだぜぇ。」

 「こんなところを女達だけで通るなんて不用心だなぁ……どれくらい危険か俺達が教えてやるよ。」

 「今後の為にいい勉強になるなぁ。おっと勉強代はお宅らの身体で払ってもらうぜ。」

 「今後がるかどうかわからねぇけどな。」

 「違げぇねぇ。」

 ぎゃはは……と下卑た笑い声をあげる盗賊たち。

 その数は20人程……既に取り囲まれている。


 「下品な事……教養の程が知れますわね。」

 二人の前に立つ、メイド隊の隊長が挑発する様に言う。

 「ミラさん、そんなこと言ったら……。」

 

 「あぁん!そんな口を叩けるのも今の内だぜ!」

 案の定、怒りをあらわにして寄ってくる。

 (いいですか、合図したら目をつぶって伏せてくださいね。)

 ミラさんが小声で囁いてくるのを二人は小さく頷く事で応える。


 「可愛がる前に、少しは痛い目見て貰おうか!」

 盗賊たちが襲い掛かろうと、飛び掛かってくる。

 「今ですっ!」

 ティナとシャナは、言われた通りに目をつぶり、その場にしゃがみ込む。

 同時に辺りを眩い光が包み込む。

 「くそっ!」

 「なんだこれは!!」

 「目が、目が見えねぇ。」

 慌てふためく盗賊たちの声に交じり、シュパッと言う何かを切り裂く音と、ドサッという何かが倒れる音が入り混じる。


 眩さが薄れてきて薄目を空けた二人の目に飛び込んできたのは、戦うメイドさんの艶やかな姿だった。

 スカートが翻り、ナイフの刀身が光を浴びて煌めく度に、一人、また一人と盗賊が倒れていく。

 二十人以上いた盗賊たちはあっという間にその数を減らし、残った親分らしい男一人をミラさんを含む三人のメイドさんが取り囲んでいた。


 「すごい……。」

 シャナとティナはその光景に目を奪われ、その為今、自分がどういう状況にいるのかを一瞬忘れてしまった。


 「さぁ、後は貴方だけですよ。大人しく降参しますか?」

 ミラが盗賊の親分に詰め寄る。

 「ハンッ!それはこっちのセリフだぜ……あれを見なよ。」

 ミラは、盗賊を警戒したまま視線を動かす。

 「ミラさん、ゴメンナサイ。」

 そこには背後から羽交い絞めされたティナとシャナの姿があった。

 「俺達がここにいるだけだと思ったのが運のツキだな。さぁ、そのナイフを捨てて衣類を脱いでもらおうか?他に武器を隠し持たれていては困るからなぁ。」

 ぐふふ……と下卑た笑いを漏らしながらイヤらしい目をして近づいてくる盗賊のボスの鼻先をナイフが掠める。

 「キサマっ!あいつらがどうなっても……ってあれっ?」

 盗賊の親分が激高し部下たちに襲わせようとするが、ティナたちは既に自由を取り戻している。

 その足元にはさっきまで二人を羽交い絞めしていた男たちが転がっている。

 「さっきの言葉、そっくり返しましょう。いつ我々が三人だけだと言ったのですか?他にいる事に気づかなかったあなた方の負けです。周りに隠れていた人たちも既に戦闘不能ですよ……もう一度聞きます、大人しく降参しますか?」

 再度問いかけるミラさんに飛び掛かる盗賊の親分……しかしアッサリと当身をくらわされ、その場に倒れ伏してしまった。


 「シャナさん、ティナさんもう大丈夫ですよ。怖がらせてしまい、申し訳ありませんでした。」

 ミラさんが二人に頭を下げる……が。

 「あぶないっ!」

 後ろから、起き上がった盗賊がミラさんに襲い掛かる。

 他のメイドさん達は、倒れている盗賊たちを縛り上げるため散っているので間に合わない。

 ミラさんも不意を突かれたために反応が一歩遅い。

 もうダメだっと二人が思った時、その盗賊が崩れ落ちる。


 「最後の詰めが甘いようですわね。」

 「アセリア様……。」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「アセリア様……。」

 突然現れて危機を救った女性を見て、驚いた声を上げるミラさん。

 「いやいや、十分な働きだっただろ?あれもギリギリ躱せたんじゃないか?」

 更にその後ろから姿を現す男性の姿が……何でへーかがここにいるの!?


 「ふぅ……主殿は甘いです。確かに掠るぐらいで躱し止めを刺せたでしょうが、ナイフに毒が塗ってあったとしたら?その後の護衛に支障が出る様ではメイド隊は務まりません。……ミラ、帰ってきたら一層の修業をしますからね、覚悟しなさい。」

 「ハイっ!この度は助けていただきありがとうございました。」

 そう言って深々と頭を下げるミラさん……あの人が噂のアセリアさんかぁ。

 そんな事を考えていると隣にいたシェナが口を開く。

 「あの……何で陛下がここに?」

 シェナが口をパクパクさせながら辛うじてそれだけを言葉にする。

 「そうです、何でへーかがいるんですかぁ?」

 私達が何もできずにボーっとしていた処見られてたっ!

 そう思うと恥ずかしさで顔をあげていられなくなる。

 「いや、まぁ、その、なんだ……。」


 しどろもどろになって答えてくれないへーかに代わり、一緒に来ていたアイリス姐さんが教えてくれたところによると、私達の交易そのものが盗賊たちを釣る餌だったみたい。

 可憐な少女達が護衛もつけずに行商の旅をしている……襲えばお宝も女も楽に手に入り、これを見逃す盗賊はアホだ、とばかりに釣れるだろう……そうやって各街道に跋扈する盗賊たちを釣り上げ、根絶やしにしようと言うのがへーかの計画。


 まぁ確かに、自分で言うのもなんだけど、私の容姿はそれなりに自信持っていいと自負してるし、シャナは美人だし、メイドちゃん達も可愛い……まさか、この可愛らしいメイドちゃん達があのような戦闘力を持っているなんて思いもしないし、街ではこれ見よがしに大量に物資を買い込む姿が目撃されている……餌としてこれ程上等なものは無いだろうね。


 私達がへーかの出してくれた簡易セーフハウスで交代でシャワーを浴び(そう、このへーか特製のセーフハウスには何と浴室がついているのだ。……こんな大きなものを収納に入れているへーかって何者って思っちゃうよね。)アセリアさんが入れてくれたお茶を飲みながらアイリス姐さんの説明を聞いている間に、私達を襲った盗賊たちの処理が終わったみたいで、へーかがセーフハウスに戻ってきた。

 「えっと、結局あの盗賊さん達は……?」

 「あぁ、素直にアジトを教えてもらい、素直に解散することを了承してくれたよ。……あ、これお土産。この中のものは全部売っちゃって、そのお金はキミタチのお小遣いにしていいから。」

 そう言ってへーかから渡された小さな収納バックの中身を見ると……見覚えのある衣類や防具武器などが入っていた……。

 アイリス姐さんと何やら宝がどうとか、身ぐるみはがして……等と不穏な単語が飛び交う中、この袋の中身について問いただす勇気は私にはなかった。

 私はシャナにバックを押し付けて何もみなかったことにしようと心に誓った。


 ◇


 「じゃぁ、この後も盗賊に襲われると思うけど頑張って。」

 へーか、それって笑顔で言う言葉じゃないよね?

 転移であっという間に姿を消したへーか達を見送った後私達は何事もなかったかのように旅を続ける。


 「ねぇ、ティナ……私達って陛下のお気に入り……なんだよね?」

 そう力なくつぶやくシャナに、その通りだよ!と元気に答えるだけの気力を、私は持ち合わせてなかった……。


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