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割と暇な帝城の日常……混浴露天風呂は男のロマンだ!

 「…………。」

 「どうしたんですか?」

 ボーっとしていると、ネコミミ少女……ではなくアリーシャが、声をかけてくる。

 「いや、なんとなく暇だな、と思って。」

 俺は考えもなくそう呟くと、奥の方でバンッ!と書類を叩きつける音が響く。

 「そぉーですかぁ、シンジ様はお暇なんですねぇ。」

 書類の山を抱えたミュウナが、ズル、ズルと近寄ってくる……それ怖いのでやめてください。

 

 「い、いや、やる事が無いとかそういう話じゃなくてだなぁ……。」

 俺は慌てて、ミュウナを宥める様に言い繕う。

 実際、やることは山ほどある……今も、ミュウナとアリーシャに手伝ってもらいながら山ほどある決裁書類の処理をしている所だ。

 正直終わりが見えないぐらいの量があり、俺がいるときは隠してある『身代わり君2ヴァージョンアップしている』まで動員して処理しているくらいだ。

 ちなみにヴァージョンアップした身代わり君は煽りとボケの語彙が増えていて、ミュウナがヤサグレているのはその所為だったりする。


 「……っと、そうだ、リディアに浴室の改装を頼まれていたんだった。という事で後は頼んだ。」

 俺はアリーシャにそう告げると、さっさと執務室から逃げ出す。

 「はい、行ってらっしゃいませ。」

 「逃げるなぁ――――――!」

 アリーシャの見送る声とミュウナの叫び声が背後で響いていたが、それもすぐに聞こえなくなる。



 「さて、折角抜け出したけど……、取りあえずは改装でもしておくかね。」

 抜け出す口実に使った浴室の改装はウソではない……ただ急ぎと言うわけではなかっただけで。

 しかし折角だからこの機に済ませてしまおうと思う……いつでもいい、と言うのはたいてい後回しになっていつまでたっても終わらないというのはよくある事だからな。


 リディアから頼まれたのは浴室の増設だった。

 この帝城の地下には大浴場が2つ設置してある……男湯と女湯だ。

 これを俺達も使用人たちも分け隔てなく使用できるようにしているのだが、実際には使用人たちは俺達に遠慮して寝静まった後に、隠れるようにして使用しているという。


 「それじゃぁ、折角の広いお風呂が楽しめないでしょ?それに、夜中にふとお風呂に行きたくなっても、私が行くと皆遠慮しちゃうし……。」

 「確かに、作業後などに汗を流したいときはあるからな、それが使いたい時に使えないのは、確かに問題があるな。」

 俺はリディアにそう言って、近いうちに増設することを約束したのだが……。


 「さて、それはいいけど、どうするかなぁ……。」

 要は皆が気兼ねなく好きな時に利用できるようにしたいという事なので、浴室を増やせば解決とは思うのだが……。

 「俺達に遠慮してるって事は、同じフロアに増設してもあまり意味ないかも知れないなぁ。」

 浴室が違うとはいえ、脱衣所が同じだったり、すぐ隣に俺達がいるとわかったら結局は気兼ねしてしまうかもしれない。

 「……だったら、ちょっと面倒かもしれないけど、やってみるか。」


 ◇


 「すっごぉーい!ここまでしてくれるなんて。」

 新たに出来上がった浴槽を見てリディアが感嘆の声を上げる。

 「これは皆を呼ばなくちゃね。」

 リディアが早速他の子達に連絡を入れ始める。

 

 どうせ場所を変えるのなら、と俺は城の最上階のフロアを浴室に改装した。

 一面ガラス張りでロケーションも最高だ……勿論、マジックミラーになっていて外からは見えないし、材質も『魔晶結石(マジカルクリスタル)』を使用しているので、防護面でも安全だ。

 フロア全体を浴場スペースにしたので、メインの大浴場だけでなく、サブの浴場を3つほど作ってある。

 まぁ、一応他の王族など特別なゲストが来た時にもてなす事が出来る配慮、と言うわけだ。


 そしてここに入れる人物に制限をかける事で俺達以外は入れないようにし、警備面の安全も確保してある。

 浴室内は一番無防備だからな……実は改装にあたり、皆に意見を聞いた時、シェラに聞いたところによると、俺達が湯浴みをしている時間帯は、城内総出で警備にあたり目を光らせていたそうだ。

 使用人に化けて近づく不審者もいるそうだから、もう少し考えて欲しかったところです、と言われて、はじめてその危険性に思い当たったのだから、俺も平和ボケしていたんだと気づかされた。


 ゲストが使用するときは一時的な許可証を発行することになるが、発行は信頼の置ける者にしかしないのでそれ程問題は無いだろう。

 と言うか、信頼の置けない奴を城に入れる気はないから、それほど気にすることはなさそうだが。 


 新しい浴場のフロアに入れるのは俺とエル、リディアとアイリスにクリス、エレナに加えて、シェラ、リオナ、レム、マリア、アリーシャ、ミュウナの計12人だ。

 リオナ達は浴場の清掃等やエル達の介添えなどと言う理由もあるが、湯浴みの時位はゆっくり寛いでもらいたいという気持ちもある。

 彼女達の立場は使用人達の中でも特殊な位置にあるため、それなりに気を使う事が多く、余り寛いでいる所を見た事が無い。


 そんな事を考えていると、次々とみんなが集まってくる。

 「わぁー、凄い。」

 「帝都全体が見渡せるんですね。」

 「なんか落ちそうで怖いよぉ。」

 新たな浴槽を見て皆口々に感想を述べあう。

 「あの、私達もここを使っていいのでしょうか?」

 恐る恐ると言った感じでアリーシャが聞いてくる。

 傍ではミュウナやマリアちゃんがウンウンと頷いている。


 「いいに決まってるじゃない。何遠慮してるの?」

 エルが遠慮は無しだからね、とアリーシャ達に言い聞かせている。

 リオナやレムはともかくとして、アリーシャ達はこの城に来てから日が浅い為、様々な場面で遠慮している節がある。

 仕事などの公な面ではともかくとして、プライベートな所では遠慮してほしくないんだけどな。

 

 「折角、皆さん集まった事だし、今から一緒に入りませんか?」

 俺と同じことを考えていたのだろう、アイリスがそう提案してくる。

 まぁ、最初に皆と一緒に利用すれば、その後も使用しやすいだろうし、裸の付き合いと言うだけに、みんなで一緒に入って、ヘンな遠慮は吹き飛ばしてもらいたいものだ。

 

 「いいんじゃないか、じゃぁ俺は出ていくからみんなでゆっくり寛いでくれよ。」

 そう言って出て行こうとする俺の腕をリディアが掴む。

 「何言ってるんですかぁ?シンジさんも一緒ですよ?」

 リディアの言葉に、皆が一斉に頷く。

 「いや、ソレは、ちょっとマズいだろ。」

 俺はそう言いながらアリーシャ達の方に視線を向ける。

 彼女たちは真っ赤になって俯いている。

 

 エル達は、まぁ、その、何だ、婚約者でもあるからして、そういう関係を結んだこともあり、今更一緒にお風呂、という事で動じたりはしないが、アリーシャやミュウナ、マリアちゃんに手を出してはいない……ミュウナやマリアちゃんに至っては裸すら見た事が無いのだ。

 それなのに一緒にお風呂って……ハードル高すぎるだろ?


 「あのっ、……私達は、シンジ様が良ければ……ただ恥ずかしいのであまり見ないようにしていただけたら……と。」

 アリーシャ達が真っ赤になりながらそう言ってくる。

 「シンジさぁん、女の子にここまで言わせておいて、今更逃げないですいよねぇ?」

 リディアが、ニマニマしながら言ってくる。 

 「分からないわよ、シンジはヘタレだから、逃げ出すかも?」

 エルが挑発してくる……ヘタレじゃないやい!


 「あー、もうわかったよ。一緒に入ればいいんだろ。」

 「そゆこと♪じゃぁ、シンジは先に入っていてね。」

 俺が叫ぶように言うと、エルはニッコリと笑い、皆と一緒に浴室から出ていく。

 それを見送ってから俺も脱衣所に移動し、衣類を脱ぎ捨てると再び戻ってきて、湯船に身を沈める……あぁー、癒される。


 「シンジぃ、お待たせぇ♪」

 入り口から賑やかな声が聞こえてきたと思ったら、背後からそう声を掛けられる。

 その声に俺の心臓は跳ね上がる。

 だって、よく考えると、美女たちとの混浴だよ?

 このシチュエーションで期待と緊張しない奴は男じゃねぇ!


 エルの小柄な割には主張の激しいアレ(・・)や、アイリスの慎ましやかなソレ(・・)などあらゆるニーズにこたえているのではないかと言うぐらいバリエーション豊かな美少女たちの柔肌……それが振り返ればそこにあるのだ。 

 まさしく理想郷(アルカディア)……あぁ、桃源郷はここにあるのだ。


 「いや、待ってないよ。」 

 俺は期待を胸に振り返る……。

 「エヘッ、期待したぁ、期待してたでしょぉ♪」

 振り返った先には美少女たちがいた……全員湯着を纏っていたが……。

 いや、普通ソウダヨネ……。

 分かっていたとも、期待なんて全然していないとも。

 湯着の上から両腕で胸元を隠すようにしているミュウナ。

 湯につかり、恥ずかしそうにしながらも、そっと寄り添ってくるマリアちゃん。

 何故かアイリスとシェラに胸を揉まれているアリーシャ……。

 湯船につかりながら、思い思いに寛ぐ美少女たち……。

 これだけでも素晴らしい眺めじゃないか!

 これ以上望むのは贅沢と言うものだ。


 「ねぇ……見たい?シンジさんにならぁ、見せてもいいよぉ?」

 俺の傍に来て、湯着の胸元を少しだけはだけさせながらそう言ってくるリディア。

 見えそうで見えない絶妙なはだけさせ方にリディアの計算能力の高さが伺える。

 「……見せてくれるのか?」 

 反射的に、ついそう言ってしまう。

 「やだぁ!シンジさんのえっちぃ。」

 リディアはおかしそうに笑いながらお湯をかけてくる。

 くそっ!からかわれるのは分かっていたのに、つい反応してしまった。


 「あ・と・で・ね♪」

 リディアが耳元に口を寄せてそう囁く。

 ドクンっ!

 不覚にも心臓が跳ね上がる。

 「わ、私も……良ければ……その……後で、シンジさんに……。」

 聞こえていたらしいマリアちゃんが対抗してそう言ってくるが、羞恥に耐えられず、真っ赤になって俯いてしまう。

 ……ダメだ、理想郷(アルカディア)は危険が多すぎる。

 頭がクラクラしてくる……。

 「のぼせそうだ……先に上がる!」

 俺はそう言って戦略的撤退を試みるが、アリーシャにインターセプトされる。

 「シンジ様、助けてください!」

 そう言いながらしがみ付いてくるアリーシャ。

 湯着越しでも十分にわかる破壊力……どうやらソレがアイリスとシェラの何かに火を付けたらしい。

 「シンジ様、やっぱり大きい方がいいんですかっ!」

 アイリスが詰め寄ってくる。

 「誤解だ!」

 「なら何で、アリーシャを抱きしめているんですか?」

 「えっ?」

 言われるまで気づかなかったが、いつの間にか俺はアリーシャを抱き寄せていたらしい……どおりで胸元が幸せなはずだ。

 俺は慌ててアリーシャと距離を置く。

 「あんっ……もぅ……。」

 アリーシャが何か呟いているが、アイリス達に差し出すことで難を逃れる。

  

 そしてそのまま撤退に入ろうとしたら腕を引っ張られた。

 「シンジ様こちらです。」

 湯船の中ほどに意味もなく設置した大岩……その陰へと誘われる。

 「ここなら隠れていられますわよ。ほとぼりが冷めた頃を見計らって、こちらを通っていけば出れますわ。」

 ミュウナがそう説明してくれる。

 「ありがとう、助かる。」

 俺はそう言ってミュウナを見る。

 湯着の所為ではっきりとは分からないが、それでも出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいる均整の取れた理想的なプロポーションであることは想像できる。

 特にその胸元はエルにも負けていないのではないか……いや、年齢的な事を考慮すればさらなる破壊力を得ることもありうる……ミュウナ、別の意味でも末恐ろしい子だ。


 「……そんなに、見つめられると……恥ずかしぃ……。」

 ミュウナは胸元を両腕で抱えるように隠すとお湯の中に体を沈める。

 「その……私も……シンジ様さえよろしければ……その……待ってますので……。」

 ミュウナが真っ赤になりながら小声で何か呟いている。

 よく聞き取れないが、これは聞いてはダメなヤツだと、本能が警鐘する。

 「じゃ、じゃぁ、俺は先に上がるな。」

 本格的に頭がクラクラしてくる。

 これはのぼせた意外にも原因がありそうだ……これ以上はヤバいと判断して、俺は何とか戦略的撤退に成功する。


 「流石に11人って多すぎるだろ……どこのハーレムだよっ!」

 まぁ、目の保養にはいいが……等と考えつつ、俺は足早にその場を立ち去る事にする。

 浴室内では、キャッキャッと、黄色い声が響き渡っていた。

 


 ……その後、彼女たちが寝室に押しかけてきて、色々大変だったのはまた別のお話。

 


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