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ストロベリーファンド ~はずれスキルの空間魔法で建国!? それ、なんて無理ゲー? ~  作者: Red/春日玲音


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新メンバー加入!……ってトラブルが起きるフラグだよね?

 「俺と組んで遺跡探索に行かないか?」

 アシュレイがそう言ってくる。

 「いや、俺達すでにパーティを組んでいるんだが?」

 俺はそう言ってエルとシェラを見る。

 「いや、それは知ってる。だから、三人とも俺と組んで……ほら、壁役の剣士がシンジ一人だけより、厚みが出るだろ?」

 「それって、組むというより入れて欲しいってことじゃないの?」

 「素直に入れてーって言えばいいのに、ですわ。」

  エルとシェラがクスクス笑いながら言う。

 「いや、それだと、なんか負けたような気が……。」

 「入れて欲しいのだ!」

 アシュレイの声に被せて、ミリアが言ってくる。

 「お願いなのだ、お姉さまと一緒のパーティに入りたいのだ。」

 目をキラキラさせながらミリアが訴えてくる。

 「入りたいのだ、入りたいのだ!お姉さまと一緒にいられるのなら、シンジの下僕でも奴隷でも構わないのだ!」

 おいおい……人聞きの悪い事を。

 ほら、エルの眼が冷たいし、シェラの軽蔑の眼差しが痛い。


 「ミリア、お前が入ると俺がこういう目で見られるからヤダ。」

 俺はエルとシェラを指さして言う。

 「そ、それは……困るのだ・・・・・・・お姉さま、お願いなのだ……。」

 ミリアがエルとシェラに必死な目で訴える。

 「でもねぇ……。」

 エルがシェラを見る。

 「えぇ、ミリアがシンジ様の毒牙にかかるのを見過ごすわけにもいきませんし。」

 ……ってどんだけだよっ!

 「シンジがミリアと……ミリアはいい子だけど……でも……。」

 エルは何やらブツブツ言っている。


 「おーい、俺の事忘れてないかぁ?」

 「ゴメン、忘れてた。」

 アシュレイが、がっくりと膝をつく。

 「もういいよ……頼む、俺をパーティに入れてくれ。」

 俺はアシュレイを見た後エル達に目を向ける。

 エル達は俺に任せるという様に、軽く頷く。

 「アッシュ、お前の気持ちはよくわかった……だが断る。」

 

 アシュレイは、最初何を言われたか分からないという顔をした後、俺の言葉を理解する。

 「理由を……聞いていいか?」

 「俺のパーティに男はいらない……エルに色目を使うからな。」

 実際、エル目当てのパーティ加入希望者が多いのだ。

 エル自身が認めたのならともかくとして、それ以外の奴をエルに近づける気はない。

 アッシュなら心配ないとは思うが、どこでエルがハッシュベルクの王族唯一の生き残りとバレるか分からないし、危険は出来るだけ排除しておきたい。


 「お、俺は、色目なんか使わな……。」

 「男じゃないなら、私はいいって事なのだ!」

 またしても、アシュレイの言葉に被せてミリアが言う。

 「だから、お前が入ると俺が変な目で見られるからいやだって言ってるだろ。」

 「それは酷いのだ!横暴なのだ!」

 ミリアが訴えてくる。


 「あー、もう、わかったよっ!今度の一回だけでもいいから俺と組んでくれ。」

 アシュレイが叫ぶ。

 「だったら、私も一緒に組むのだ!」

 ミリアがその言葉に乗っかってくる。

 ……段々混乱してきたなぁ。

 

 「シェラ、後は任せる。」

 俺はシェラに押し付けることにして、エルとランチを食べることにした。


 ◇


 「で、なんでこうなってるんだ?」

 俺達のホームのリビングで、お茶を飲んでいるアシュレイとミリア。

 ランチタイムの後、俺は二人の事をシェラに任せて昼からの講義に行き、今帰ってきたところなのだが……。

 「シンジ、邪魔してるぞ。」

 「ここはいい所なのだ。」

 にこやかにお茶を飲んでいる二人から目を逸らしシェラに目を向ける。

 「色々と深い事情がありそうですので、私の手じゃ負えないと判断しました。」

 シェラがそう言うが……。

 俺はエルに目を向ける。

 「ウン、取りあえずは二人の話を聞いてあげて。」

 エルがそう判断したなら、少なくともおかしな理由じゃないって事か。


 「はぁ、わかったよ。……それで?」

 俺は席につき、二人に話をするように促す。

 横からシェラがお茶を差し出してくれる。

 「私から話すのだ。」

 ミリアが先に話し出す。

 「恥ずかしい話なのだ……。」

 

 ミリアの話は、それほど複雑ではなかった。

 一言でいえば「金がない」だ。

 所持金がなくなり、宿を追い出されて、今は街を出たところで野営をしているそうだ。

 金がないなら依頼でも受けて稼げばいいと思うのだが、生憎と彼女は学園に入る際に冒険者登録をしているため、ランクが低くろくな依頼がないらしい。

 また、彼女は俺達とは別ベクトルのコミュ障であり、平時の態度のせいもあって、一緒に依頼を受けてくれる人もいないらしい。


 食事に関しては森で狩りをして凌いでいて・・・・・・まぁ冒険者なら野営は日常茶飯事の事なので、それほど問題はないらしいが、そこは女の子。

 依頼の旅の道中ならともかくとして、普段街に出入りしているのに着の身着のままと言うのは、どうも具合が悪いらしい。

 ミリアでもそれくらいの羞恥心は残っていたようだ。


 「一応、さっきお風呂に入れてあげたんだけどね……ヤッパリ、同じ女の子としては・・・・・・。」

 ダメかな?と、エルが、困った様な表情で俺を見上げる。

 計算疑惑があるものの、俺はエルのこの表情に弱い。

 

 因みに、収納バックを見て欲しがったのも、着替えなどの私物を入れておけるから、と言うのが理由だった。

 今は私物をまとめて学園のロッカーに隠してあり、必要に応じて取り出しているらしい。

 「収納バックを転売すれば金が手に入る、とか考えなかったのか?」

 俺がそう訊ねると、ミリアは「そう言われれば……。」と全くそのような考えが浮かび上がらなかったという。

 

 「はぁ・・・・・・。」

 しょうもない上、割と切実な問題を抱えていたミリアの問題は、解決しようと思えば出来るのだけど・・・・・・。

 俺は再度エルをみる。

 私は大丈夫よ、とエルが頷く。

 まぁ、エルがいいなら、後はフォローするだけだ。


 「シェラ、今日からメイドをひとり雇うことになったみたいだから、頼むな。」

 「えっ、それって……。」

 ミリアが驚いた顔をする。

 「詳しい事はシェラに聞いてくれよ……部屋は後で用意するけど、まぁ今夜はエルとシェラと一緒で我慢してくれよ……っと、わゎっ。」

 いきなり飛びついてきたミリアを辛うじて受け止める。

 ……柔らかい。

 こいつも女の子だったんだなと、予想より小さな身体を支えながら思う。

 「シンジはやっぱり、良い奴なのだっ!」

 「ハイハイ、シンジ様から離れましょうね。」

 抱きついてきたミリアを、シェラが引き離す。

 そのまま着替えや部屋の掃除などの為に奥へと連れていく。

 「シンジ、ありがとうね。」

 エルがお礼を言ってくる。

 「いや、エルがいいなら問題はないんだが……本当によかったのか?」

 「ウン、ミリアはトモダチ……だから。」

 「そっか……。」

 俺はエルの頭を撫でる。

 「えーっと……ちょっと……恥ずかしぃ。」

 頬を赤く染めながら、ちらっと横目でアシュレイを見る。

 そう言えば、コイツがいたんだっけ。

 

 「あー、普段見た事のないエルフィーちゃんの様子を見れたのはいいんだが、俺の事放置し過ぎじゃね?」

 「ゴメン、存在を忘れていた。」

 「おいっ!」

 「で、お前の方は何だっけ?遺跡?」

 「あぁ、実はこの間仕入れた情報なんだが……。」


 アシュレイの話を纏めるとこうだった。


 下級貴族のフォード家の七男……嫡出子としては三番目の男子……として生まれたアシュレイは、七男という立場上フォード家を継ぐことは叶わないが、剣の才能があることがわかってからは、剣を頼りに身を立てようと決意する。 

 騎士団に入るか、貴族の家臣として取立てられて勲功を立てる、又は冒険者として名を上げるのが一番早い。

 その為にグランベルクの学園に来たという事らしい。

 アシュレイはある日、街でこんな噂を聞く。

 「領主が近衛隊の隊員を募集している。魔法がかかった剣を持つ者を優先的に採用してくれるらしい。」


 「しかし、魔剣なんて買う金はねぇ。だったら探すしかないだろ?」

 アシュレイはそう言うが……。

 「探すって言っても、そう簡単に見つかるもんじゃないだろ?」

 「ところが、だ。古代魔法王国時代の遺跡で未探索の所があるらしいって情報を得たんだ。」

 その噂が本当なら、確かに魔剣の数本ぐらいは見つかるかもしれない。

 ……が、余りにも話が旨すぎる気がする。


 「なぁ、アッシュ……話が旨すぎると思わないか?」

 「分かってるよ……ただ、チャンスなんだ。このチャンスを逃したら、次はいつになるか……。少しでも勝算があるなら、俺はそれにかける。……お前にはわからないかもしれないが……貴族には貴族の苦労があるんだよ。」

 アシュレイがこの件にかけているのはよくわかった。

 そして、らしくもなく語った事に照れていることも……。

 アシュレイとしては、場を和ませようとしたんだろうが、最後の一言は余計だったな。


 「俺は平民だからな、お貴族様の事なんてわからんさ。」

 「あ、いや、そう言う意味じゃなくて……。」

 俺の口調の微妙な変化に、アシュレイは自分の失言に気づき、慌てて言い訳をしようとする。 

 「そうね、シンジにわかれと言う方が無茶だわ。」

 エルが、ニヤッと笑い、アシュレイを見る。

 「ところで、貴族貴族って言うけど、あなたは貴族になって何をするの?」

 「えっと何って言われても……なぁシンジ、エルフィーちゃんの様子おかしくないか?」

 エルの変貌ぶりに驚くアシュレイ。

 そうは言っても、あれがいつものエルだしなぁ……まぁ、学園での大人しいエルしか知らないんじゃ仕方がないか。 

 「答えられないの?あなたの言う貴族ってその程度のもの?」

 「違う!俺は貴族になって守るんだ。貴族でなければ……守れないものもあるんだ!」

 そしてアシュレイが語り出す。

 「昔、仲の良かった姉弟がいたんだ。物心ついたときからずっと一緒だったんだ。ある日、姉の方が近隣の貴族に見初められて出ていくことになったんだ。それを知った俺は弟のルディに「おめでとう!」と言ったんだ。そうしたら……思いっきり殴られて、ルディとはそれっきりだ。」

 俺とエルは黙って聞いている。

 「俺は知らなかったんだ。平民は貴族に逆らえないって事を……貴族の中には、その権力をカサにきて気儘にふるまう奴らが多いって事を。……貴族から弱者を守るためには……貴族と戦うためには貴族の力がいるんだ。」


 アシュレイの言葉を聞いてエルが考え込む。

 とはいっても、あのアシュレイの言葉を聞いたなら答えは決まってるんだろう。

 「ねぇ、何故私達なの?」

 エルがアシュレイに再度問いかける。

 「まぁ、シンジは俺が認めた友人だからな。それに、古代魔法王国の遺跡となればどうしても魔法の力がいる。エルフィーちゃんもシェラさんもかなりの魔法の使い手と見てるんだが……違うか?」

 アシュレイの前ではシェラもエルも魔法を見せていないはずだが……意外と見る目があるのか?


 エルが考え込んでいる。

 「ねぇシンジ……。」

 「あぁ、分かってる。」

 俺はアシュレイに向かって告げる。

 「アッシュ、出発は三日後でいいか?」

 「えっ、じゃぁ……。」

 「あぁ、手伝ってやるよ。」

 「ありがとう。感謝する。」

 「エルの元気を取り戻してくれた礼だよ。気にすんな。」

 「俺とお前が前衛に出てエルフィーちゃん達を守り、エルフィーちゃん達の魔法があれば、古代魔法王国の遺跡なんて目じゃねぇな。」

 「あ、その事なんだけどな、俺は前衛じゃないからな。……一応魔法使い(マジックキャスター)だ。」

 「しょぼい魔法しか使えないけどね。」

 エルが笑いながらツッコんでくる。

 うるさいよ。


 「うそだ、何であんなスピードなのに……。」

 「魔法がしょぼいし、剣術も知らないからな。出来る事をやってるだけだよ。」

 アシュレイはどうやら俺が魔法を使う事を知らなかったらしい。

 付与術とかの講義に出ていることは知っているだろうに……やっぱり、見る目はないのかもしれないな。


 「あと、一つだけ約束してほしい。」

 俺は、これだけはアッシュに言っておかないといけないと思い声をかける。

 「何だ?」

 「パーティを組むとなると、色々な事を知る事になると思うが……俺達の事を外部に洩らすなよ。」

 「そうね、私達の事を外部に喋ったら……。」

 「次の朝日は拝めないわね。」

 エルの言葉に続き、いつの間にか戻っていたシェラが、アシュレイの背後から、首筋にナイフを突きつける。

 「わ、わかった……大丈夫だ。」

 アシュレイの顔が引きつっている。

 「おーい、あんまり脅すなよ。」

 「冗談ですよー。」

 俺が声をかけると、シェラがナイフの刃をくにゃくにゃして笑う。

 俺が前に作ったジョークアイテムだ。

 「さっきの言葉は冗談じゃないですけどね。」

 そう言ってアシュレイを睨む。


 「あー、アッシュ。一応忠告しておくけど、エルとシェラには逆らわないほうがいいぞ。」

 「あ、あぁ、忠告感謝するよ……じゃぁ三日後に。」

 そう言って逃げるようにして出ていくアシュレイ。

 「そうだ、ミリアの装備を見繕わないとな。」

 「じゃぁ、明日は街に出て買い物ですね。」

 「あぁ……また貯えが減るなぁ。」

 「いいじゃないの。古代魔法王国の遺跡でしょ。きっと、お宝が沢山あるわよ。」

 嘆く俺を励ますように言うエル。

 アシュレイの言葉を聞いて何を思ったのか……エルの中で何かが吹っ切れたようだ。

 久しぶりに見るエルの表情は、俺のテンションも上げてくれる。


 「そうだな、遺跡探索、楽しみだな。」

 


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