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たとえ道に迷ったとしても、やるべきことは変わらない……のかな?

 「なぁ?」

 ドゥォォォォン!


 「なんですかぁ?」

 俺の問いかけに、背中に持たれていたリディアが返事をする。

 ドゥォォォォン!


 「リディアって、性格変わったよなぁ?」

 「何言ってるんですかぁ?私はもともとこういう性格ですよぉ。」

 ぷんぷんと頬を膨らませながらリディアが言うが……。

 「いや、出会った頃のお前って、もう少し、こうお淑やかと言うか、大人しかったんじゃないか?」

 ドゥォォォォン!


 「……気のせいですよ?」

 今の間は何だ?

 「まぁ、もし変わったというのならぁ、それはシンジさんの所為ですよぉ。」

 「俺の?」

 ドゥォォォォン!


 「そうですよぉ、私はシンジさんの色に染められたのですぅ。芋虫が蛹を経て美しい蝶に変わるように、私もまた初心な少女からシンジさん好みの妖艶な美少女へと……あれ?シンジさんは美少女より美幼女の方が好みでしたっけ?」

 ドゥォォォォン!


 俺は振り返ってリディアの頭を叩く。

 「痛ぁーい、……何するんですかぁ、もぅ!」

 リディアが頭を抱えながら文句を言ってくる。

 「誰が幼女趣味だよ!」

 とんだ風評被害である。

 ドゥォォォォン!

 ドゥォォォォン!

 ドゥォォォォン!


 「ところで、そろそろどうだ?」

 「んー、もうちょっとかな?でも、これくらいながら移動しながらでも大丈夫ですよぉ。」

 ドゥォォォォォォォォォン!


 「そうか、丁度変化があったようだし、回収するまでの間は休んでいろよ。」

 俺はリディアにそう声をかけると、残ったプチゴーレムたちを呼び戻す。

 順次戻ってくるプチゴーレムたち……体長20㎝程度の手のひらサイズだ。

 屋敷の部屋には、騎士を模したものや向こうの世界のキャラクターを真似たもの……所謂『フィギュア』として飾ってあったりするが、今ここにいるものはずんぐりむっくりとした、某ゲームキャラの『ゴーレム』そのものの形をしている。


 このゴーレムたちには『エクスプロージョン』が付与してあり、体当たりすることで発動する様になっている。

 まぁ、急遽作成したものだからそれほど魔力を込めていない為、従来のエクスプロージョンより1/30程度の威力しかないが、岩壁を壊すには十分である。

 さっきから聞こえていた爆発音は、このゴーレムたちが身を挺して穴を掘り進んでいた音だったりする。


 俺達はゴーレムたちに穴掘りを任せ、ここで魔力回復……主にリディアが……していたのだが、先程の爆発で大きな空洞とつながったみたいなので移動することにする。

 「でもぉ、シンジさんも大概ですよねぇ。」

 「何がだ?」

 「そのゴーレムちゃん達、作るのにかなり魔力消費していますよねぇ?なのに私より平気そうですよぉ。」 

 「まぁ、魔力量と回復速度は人外の域に達している自覚はある……。」


 最近、ちょっと気にしてるんだから、そんな目で見ないで欲しいな。

 実際、小さめとは言え、ゴーレムを作るのにはそれなりの魔力が必要となる。

 同じ土属性を持っているリディアもゴーレムを作れるが、このサイズでもリディアが作成した場合、5体も作成すれば魔力枯渇状態に陥るだろう。

 加えて灼熱の大爆発(エクスプロージョン)を付与するための魔力量は、1体につき5体分作成するぐらいの魔力量が必要となっている……付与術があまり普及していないのは、この馬鹿みたいに消費する魔力量の所為だったりする。

 付与するぐらいなら自分で使った方が魔力消費を抑えられるというものだ。


 まぁ、俺の場合多属性持ちという事が災いして、自前では灼熱の大爆発(エクスプロージョン)みたいな上級魔法が使えないので、付与術に頼るしかないのだが……自分で使えないのに付与できるというのが疑問に残るのだが、まぁそういうもんだという事で納得しておく……まだまだ魔法と言うものは謎が多い。


 「シンジさんなら、一人で世界征服できそうな気がしますよぉ。……『歩く理不尽』の二つ名を差し上げるのですぅ。」

 いらんわ、そんな二つ名。


 そんなくだらないことを話しながら、狭い通路を進んでいくと、ゴーレムが開けた空洞へと辿り着く。

 「やっと広い所に出られましたねぇ。」

 「まぁ、今まで狭い所にいたのはリディアの所為だけどな。」

 「違いますぅ、あのカエルとヘビの所為ですぅ。」

 ……リディアの中ではヘムゲル子爵がカエル、ジャスワート伯爵がヘビという事になっているらしい……まぁ、確かにそんな感じではあったが。

 特にジャスワート伯爵のあの目は、獲物を見つけて嬲るときのヘビの眼そっくりだった。

 

 「まぁ、十中八九、今回の元凶はあのジャスワート伯爵に決まりだな。後はヘムゲル子爵がどこまで関わっているかと、領主の関与があるかないかってところだけど。」

 「んー、関係ないですよぉ。関わっていようがいまいが、連帯責任と監督不行き届きってやつですぅ。」

 「……まぁ、そうだな。」

 普段はほわほわしているリディアだが、こういう所はやはり一国の王女として育てられたと思い知らされる……責任と覚悟がしっかりと出来ているのだ……だから他の執政者に対しても容赦が無かったりする。

 それはアイリスやクリスも一緒で、普段から『悪辣非道』だの『情け容赦ない』等と言われている俺だけど、彼女たちに比べたらかなり甘いんじゃないかと思う時が多々あったりする。

 「そんなシンジさんが好きですよぉ。」

 俺の考えを読み取ったのか、リディアがすり寄ってくる。

 ……ホント、この子達にはかなわないよ。

 

 「それはそれとして……。」

 俺はリディアを撫でてやりながら室内を見回す。

 ちょっとした小部屋みたいだが、特に何かがあるわけでも無く、それでも岩壁などを調べる俺を見て、リディアが不審がる。

 「んー、何か気になるんですかぁ?」

 「あぁ、ちょっとな……リディア、メテオを撃ってみてくれ。」

 「えぇっ!そんなことしたらまた崩れちゃいますよ?」

 「ん、たぶん大丈夫だから、頼む。」

 「もぅ……どうなっても知りませんからねっ。」

 不承不承と言った感じでリディが魔法を唱える。

 

 「『隕石雨(プチ・メテオ)!』……ってあれっ?」

 リディアのメテオは不発に終わる……予想通りか。

 「あれ?おかしいなぁ。手応えはあったんだけど、阻害されてるのかな?」

 「今度は『爆烈風(エア・ブラスト)』か『石礫(ストーンバレット)』を頼む。」

 不思議そうに頭を傾げるリディアにもう一度魔法を頼む。

 「うーん、……『爆烈風(エア・ブラスト)』!」

 何もない空間に向かって風が吹き荒れる……やっぱりか。

 「あれ?今度は大丈夫……どうなってるの?」

 不思議そうにこちらを見てくるリディア。

 「つまりだ……ここはダンジョンって事だよ。」



 

 「えっと、ここがダンジョンって、私達ずっとダンジョンにいたのですよ?」

 リディアが首をかしげる。

 「いや、さっきまでの場所はダンジョンじゃないって事だよ。」

 「どゆこと?」

 「いや、転移で飛ばされて、岩肌むき出しの見知らぬ場所にいたって事で、ダンジョンだと思い込んでいたけど、あそこは単なる屋敷の地下だったって事だよ。」

 「???」

 リディアがわけわからないって顔をしている。


 「『ダンジョン』って言うのは外界から切り離された特殊空間に存在しているんだ。」

 説明が長くなりそうだったので、俺はその場に座り込み、膝の上にリディアを招く。

 「だから、外の空間から隕石を召喚するメテオ系の魔法は、ダンジョンの外壁に弾かれて発動しない。だけど、内部で魔法が使えないわけじゃないから、『爆烈風(エア・ブラスト)』は発動した……つまりそういう事なんだ。」

 「んー、だからここがダンジョンって言うのは分かったけど……。」

 リディアは釈然としない顔をしている。


 「そもそも、正規の手順を踏むか、魔王クラスじゃないと外部から直接ダンジョン内に転移させるって事は出来ないんだよ。だからあの時の魔法陣は地下へ移動させるためだけのものだったんだよな。……落ち着いて考えればすぐわかったはずなのに、ちょっとボケてたな。」

 「うーん、よくわかんないですぅ。どういう事?」

 プチパニックを起こすリディア。


 「俺達は屋敷の地下に落とされた……これはわかるか?」

 「ウン、分かる。」

 「だけど、俺達は別の場所に飛ばされたと思い、闇雲に穴を掘って移動した結果、このダンジョンに出た……最初の場所から天井に穴をあければ屋敷に出れたのに……だ。」

 「……つまり?」

 「無駄な努力をして道に迷った……って事だよ。」

 「がーーーーん。」

 自分で、ガーンって言うなよ……まぁ、気持ちはわかるけど。


 「でも、さっきの話だと、ダンジョンに出るのはおかしくないですかぁ?外部から切り離されてるんだよね?」

 「……あー、それはたぶん俺の所為だ。」

 「……?」

 「ゴーレムに仕込んだエクスプロージョンな、普通ならゴーレムを中心に放射状に広がるんだが、それだと効率悪いから、空間魔法を使って指向性を持たせていたんだよ。……だから、空間に作用する魔法だったために、たまたまこのダンジョンの空間を破ったんだろうなぁ……。」

 「……じゃぁシンジさんの所為?」

 「いや、もとはと言えば考えなしに地下室を崩壊させてお前の所為だ。」

 「……わ、私は悪くないのですよぉ、全てはあのヘビ男の所為ですぅ!」

 ……誤魔化したな。

 「……そう言う事にしておくか。」





 「それでどうするのですぅ?ダンジョンを攻略しますかぁ?」

 リディアが聞いてくる。

 「クリスの事が無ければそれでもいいんだけどな。」

 正直、未知のダンジョンの攻略なんてどれだけ時間がかかるか分からないことに付き合っている暇はない。 

 それしか方法が無いのであればともかくとして、今回は別の方法を取らせてもらおう。


 「取りあえずはここにベースを作る。」

 俺はリディアに手伝ってもらいながら、クリエイト系の魔法を駆使して簡素なログハウス……木の代わりに岩を使っているからロックハウスか?……を組み立てた。

 中は、簡易的なキッチンにシャワールーム、休めるようにベッドを置いた寝室などがある。

 リディアが、中を見学している間に、俺は色々な仕掛けを仕込んでおく……特にここが安全なベースキャンプとして機能するように、と空間魔法を駆使した防護結界は完璧な仕様となった。


 「ねぇ、シンジさん、こんなの作ってどうするの?」

 「周りに何もないとはいえ、ダンジョンの中だからな、安全に休める場所を確保しておきたかったんだ……という事で、2~3時間休ませてくれ。」

 俺はそう言うと、ベッドに倒れ込む。

 このセーフハウスを作るのにかなりの魔力を消耗した。

 動けないわけではないが、この後ジャスワート卿たちと対峙するなら、出来るだけ回復はさせておきたかった。


 ◇


 「……んっ……ン……。」

 ……何か柔らかく、気持ちいいものに包まれている感じがする。

 あ、いかないで……。

 俺を包んでいた柔らかなものが離れる感触があり、俺は必至で手を伸ばす。

 ぎゅぅぅぅっ……。

 「アンッ……もぅ……。」

 俺の手は、それを捕まえることに成功し、ギュっと抱きしめる。

 暖かくて、柔らかい……ずっとこの心地よさに包まれていたい……。

 「……甘えんぼさんですねぇ。」

 遠くで誰かの声がする……。

 「うふっ、可愛いのですよぉ。」

 ……リディア……?

 リディアの声がする……。

 俺はまどろみの中からゆっくりと覚醒していく。


 「あ、起きちゃった?」

 「……何をやっている?」

 俺が目を覚ますと、すぐ目の前にリディアの顔があった。

 「エヘッ、襲ってまぁーす。」

 「な、何を……。」

 「シンジさんもその気だからいいじゃないですかぁ……あん、あまり力入れちゃいやですぅ。」

 俺の手は、いつの間にかリディアの胸を弄っていた……さっきから感じていた暖かくて柔らかいものって、これか……。

 「うふっ、我慢しなくてもいいんですよぉ……それにぃ「後で可愛がってくれる」っていいましたよねぇ?」

 リディアが、小悪魔的な微笑みを浮かべながらキスをしてくる。

 それだけで、クラっと来る……さらに言えば俺が寝ている間に色々したのだろう、俺の身体はしっかりと反応してしまっている。


 「シンジさんが欲しいにゃん♪」

 リディアが耳元で囁いてくる……最後の理性を吹き飛ばす魔法の言葉だ……俺に抗えるわけが無かった。



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