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最強のサムライ  作者: 須那 洋
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07 戦隊モノに緑は欠かせない

更新しました、よろしくお願いします!




時刻は午前5時、まだ寝ている人は寝ている時間だが、公園では1人の青年が素振りをしている姿があった。


富田哲平は分かっていた、路地裏の浪士の時も、今回の忍者との一悶着も、どちらも哲平は全く役に立っていない。いくら辰月が良いと言ってくれた所で、その事実は火を見るより明らかに、哲平の弱さを示していた。

強くならなければ、辰月を安心させられくらいに、父や兄を認めさせられるくらいに。


「精が出るな」


後ろから声を掛けられ振り返ると、そこには半目で眠そうな辰月が立っていた。


「おはようございます、僕の異能力は使えたものじゃない、だから僕にはまだまだこう言う努力が必要なんです」


「使えたもんじゃない…ねえ」


辰月の何か含んだような言い方に哲平は訝しげな顔をしている、すると辰月は腰に指していた刀を抜くと、見せつけるように哲平に向ける。


「何をしてるんですか?」


「いいか?能力ってのはそれぞれの人間の個性の塊だ、ソレ(・・)は使い手次第で何色にも染まる…だがそれは抜かれていればの話だ、お前のはまだ鞘から抜いてすらいない刀のようなもんなんだよ、刀は抜かなきゃ切れないんだぜ?」


「?それってどういう…」


哲平が理解出来ずに再度説明を求めようとすると、欠伸をした辰月はもう既に歩いて公園を出ていく途中だった。


「足らないかもしれないがヒントはやった、後は自分で考えろ」



そう言い残すと、辰月は公園を出て行ってしまう。1人残された哲平は先程の辰月の言葉を反復してみるが如何せん何も出てこないので素振りを再開し、目標の回数をやり終えると戻ることにした。


今哲平とアルカは辰月の家に居候している、辰月が自分たちの家が見つかるまでは居ていいと言うので甘えた形になっている。

なので公園から戻ろうと歩いているとぶらぶらと散歩をしていた辰月に会い、2人で家に戻る事にする。


2人が家に戻ると、部屋の中ではアルカがテレビにかじりついて見入っていた。


「おいアルカ、お前くっついて見すぎだ、目悪くなるぞ」


辰月が注意するもアルカは微動だにしない。


「おい!目悪くなるっつってんだろが!せめて1メートルは離れなさい!おやつ抜きにすんぞ!」


「オカンがいる…」


辰月の〔おやつ抜き〕でやっと動いたアルカはそれでも目をキラキラさせながらテレビを食い入るように見ている。


「アルカさん、何をそんなに夢中になってみてる…あ、辰月さんこれ今話題のやつですよ」


アルカが何を見ているのか気づいた哲平は得心顔でうなづいている。


「んん?何が話題なんだ?俺こんなん見た事無いぞ?」


「今ちびっ子たちに大人気の特撮ヒーロー、大江戸戦隊武士レンジャーですよ、凄い人気で今色んなところでみますよ?」


「なんだそりゃ、てか今ちびっ子って言ったよな?こいつもう17歳だろ?明らかに対象年齢外れてんじゃねえか!」


辰月と哲平が武士レンジャーについて話していると、見終わったのか満足げな顔をしていたアルカがテレビを見て奇声を上げる。


「あーーーー!!!!!」


「なんだよなんだよなんですか?次は何があったの」


呆れ顔の辰月は興味無さげにアルカを見ている、テレビを見ながら震えていたアルカは、辰月達に向き直るとテレビを指さす。


「辰月、辰月、大変だ、武士レンジャーが大江戸モールに来るらしい」


「へーそりゃすげえな」


辰月は全く興味が無いので先程買ってきた漫画を読みながら空返事をしている。

しかしそんな事はお構い無しのアルカは目をキラキラ輝かせながら立ち上がる。


「今日だって、ほら早く支度して、大江戸モール行くよ!」


「はいはい…ん?どこ行くって?」


「だから大江戸モール!ブシレッドが待ってるの、行かなくては」


「やだよ面倒臭いし、勘弁してくれよ、何が悲しくて20超えて戦隊ヒーローなんか見に行かなきゃいけないんだよ」


辰月は明らかに嫌がっているが、アルカは半ば興奮気味に捲し立てる、これを逃せばもう二度と会えないかもしれないだとか、世界にはヒーローが必要なのだとか、挙句の果てにはぷんぷん怒り出してしまう。


「じゃあ良いもん、タンスの奥に入ってた辰月のこのビデオ割っちゃうもん……」


「お前!!何でそれ持ってんだ!やめろ!俺の婦警さん達を返せ!」


辰月が動揺している事にニヤリと笑ったアルカはビデオを振りかぶる動作を見せる。


「わかったわかったよ!行けばいいんだろ?行けば、はぁ、たく何でこんなん連れてきちゃったかなぁ…」


椅子に片足を乗せ満面の笑みでガッツポーズをしているアルカと地面に手を付いて項垂れている辰月を、先程から冷静な目で見ていた哲平は思っていた。


これ、ホントに昨日と同じ2人なのかなぁ…


ーーーーーーーーーーーーー


「行けー!ブシレッド!そこだ!やれ!」


ちびっ子達の歓声な響く中、辰月と哲平は少し後ろの方から見学していた。


「おいおいあいつ何であんな前の方行ってはしゃげんの?すげぇわ逆に、ついていけないもん俺」


「ホントですね…いくら何でもこのノリは恥ずかしいっていうか、かなり前に卒業しましたし、あ、僕ちょっと飲み物買ってきますね」


哲平はステージの傍から離れたところにある販売機で飲み物を買うと、またステージの近くまで戻ってきた。


「おかしいな、辰月さんもさっきまでこの辺に座ってた筈なのに」


「行けブシグリーン!てめこらそんな事やってっからいつまで経ってもチョイ役なんだよ!たまにはかっこいい所見せてみやがれ!」


哲平は聞き覚えのある声がした気がしたので恐る恐るちびっ子達の集団を見てみると、そこにはちびっ子達に負けず劣らずの勢いで応援する赤髪の男の姿があった。


「あんたもかい!!!」


「何してるの!?ブシピンク絶対中身おっさんだって!もう裏声だもん!あんなのに負けちゃダメだよ怪人!」


少し視線をずらすともはや完全に敵の応援を始めた銀髪の娘が映る、ちびっ子よりも本気で応援し、かつ結構汚いことを言っている2人はちびっ子達にさえもドン引きされていた。

哲平はちびっ子の群れの中からアルカと辰月を引きずってくるとベンチに座らせる。


「何すんだ哲平、もうそろそろグリーンが覚醒して皆殺しにする所だったのに」


「するか!子供達の邪魔になってんでしょうが!て言うか何でそんなにグリーンに肩入れしてるんですか!あんたどっちかって言うとレッドでしょ!」


「馬鹿野郎、レッドって何かもうリーダーじゃん、勝ち組じゃん、赤いってだけでイケメンだしピンクは絶対レッドに惚れてるって決まってるし、あいつ絶対女取っかえ引っ変えだよ、グリーンが可哀想じゃねえか!」


「辰月、ピンクは女の子じゃなくておっさんだと思う、あれは絶対変態だからそれだけレッドに押し付けたらいいんじゃない?」


「レッドとピンクに謝れ馬鹿共」


なるほど、と頷く辰月にサムズアップするアルカ、哲平は明らかにちびっ子達より楽しんでいる2人に呆れて疲れた顔になる。


「兎に角、楽しむのはいいですけど、主役は子供達ですから、子供達の邪魔にならないようにしてくださいよ!」


「まあまあ落ち着けよ哲平、わかった、俺もちょいやりすぎたわ、グリーン見てたらこうふつふつと湧いてくるものがあってよ、ついな」


「私も、ピンクのあのあざといポーズを見てたら何かイライラが抑えられなくて」


「あんたら絶対戦隊モノ見に来ちゃダメな人種だよ……」


その後静かに見ていた3人は、結局まあまあ満足し、大江戸モールを出た。


「ちょっ、俺トイレ行ってくるわ」


「わかりました」


2人がトイレに行った辰月を待っていると、突然後ろから声をかけられる。


「君たち、さっき見てくれてた子だよな?」


「「ん?」」


2人が振りかえるとそこには先程のブシグリーンが立っていた。


「さっきは応援してくれて、どうもありがとうなんだぜ、緑を応援してくれる人なんて中々居ないから嬉しかったんだぜ」


「ブシグリーン!」


アルカはブシグリーンを見るや嬉しそうに写真を求めている、哲平は内心ほんとに好きだったのか、等と思い笑ってしまう。


「おまた…てうぉ!ブシグリーン!」


辰月も帰って来て何故かブシグリーンがいる状況に驚いている。


「君は…1番応援してくれていた人だね、ありがとうだぜ、君の応援…すごく身に染みたんだぜ」


「え、あ、うんそうだけど…だぜ?それ語尾?」


ブシグリーンの謎の語尾に流石の辰月も若干困っているようだ、実際辰月も哲平も、こんな変な話し方の人に会った事は無かったのだし、そもそもこのブシグリーンは人が良さそうだったので尚更扱いに困っていた。


「だぜは俺のふるさとの打是(だぜ)市でよく使われている言葉なんだぜ」


「お、おお?」


3人は困惑しているが、ブシグリーンは話を続ける。


「お前さん達、見た所侍に見えるんだぜ」


「お、おお、そうだけど」


辰月達が侍とわかるや否や、ブシグリーンは急に頭を下げ、頼みたいことがあると言い出した。


「俺の弟が、悪の組織に捕まってしまったんだぜ、お前さん達を見越してひとつ頼む!弟を助けてやって欲しいんだぜ!勿論報酬はしっかり用意させてもらうんだぜ!」


辰月達3人は少し待ってくれと言うと、3人で少し離れどうするかを話し合った、結局この哀れなブシグリーンを放っておけないのと、弟を攫われる苦しみはわかる、と言うアルカの言葉で3人は協力することに決めた。


「ど…どうなんだぜ?」


ブシグリーンは心做しか不安げに3人の表情を伺っている、いくら報酬を払うと言っても、いきなりのこんな頼みに乗ってくれる方が珍しいとわかっていたからだ、3人は頷き会うと、代表して辰月が答える。



「任せろだぜ」




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