06 アカオニ
侍ってホントに男の子なら誰でも好きだと思うんですよね。。。
「坂本辰月?聞いたことがある様な、それでこの場に何の用だ?死ににでも来たか?」
「何の用?そんなもん分かりきってるじゃねえか、こいつを迎えに来ただけだ」
周りを完全に包囲されていても辰月の余裕の態度は少しも変わらない、男はその事にイラついている用だった。するとまたもや乱入者が入ってくる、今度は冴えない男だ、とても強いとは思えない。
「やっと着いたぁ!はぁ…はぁ…辰月さん、早すぎますって…」
「お前のペースに合わせてたらこいつはもう死んでるよ、お前が遅すぎんの!」
どうやらこの2人はアルカを助けに来たようだが、何故アルカを助けに来たのかが分からない、生まれてからずっと忍びの里で生きてきたアルカが里の外に知り合いを作っていたとは考えられないのだ。
「貴様ら、邪魔をする気なら相応の覚悟があるんだろうな」
「あなた達が何故この子を狙うのかは知りません、この子が追われる理由も知らない、だけどこんな大人数で1人の女の子を狙うなんて…そんな事、男として…侍として見過ごせない!」
青いな、リーダーの男はそんなことを考えていた、この少年はまだ世界の理も残酷さも知らない、悪い事と見なしたなら何でも首を突っ込みどうにかしようとする、それが出来ると本気で思っている、男にはそれがどうしようもなく許せなかった。
「愚物が…それで?この状況でどうするつもりだ?」
男はもはやイラつきを隠せていない、もはやキレる1歩手前だ。
「決まってるだろ?お前らぶっ倒して、それで終わりだよ」
ニヤリと笑いそう言い切るや否や、辰月は両手の指から小さな白い火の玉を出す。
「焔珠・白焱」
辰月は周りの部下たちに向かい火の玉を放り出す、火の玉は信じられナイスピードで飛んでいき目標に当たると大きな火柱がとなり爆発を起こし、周りの男たちは1人残らず吹っ飛ばされる。
「な…!?」
リーダーの男は驚愕の表情で辰月を見やる、部下たちは発動する暇がなかったとは言えまだ八咫鏡の加護をその身に宿していたはずだ、それなのに抵抗すらできずに倒されるなど男には理解が出来なかった。
「坂本辰月、火の玉……… …!」
男は少し考えると何かを思い出したようで戦慄の表情を見せる。
「そうか…そうか!貴様、赤鬼の坂本か!」
「赤鬼は俺の異能力の名前だ、正式にはカタカナだがな、その呼び方をするなよ、能力なのか俺なのかよく分からなくなるだろ?しかも何かダサいしさ」
男は思わぬ強敵の出現に脂汗を流しながらも、背中の忍刀に手をかける。
「何故お前がここに…いやそんなことはどうでもいい、はは…何たる好機か…倭国十将入りの勧誘を蹴った貴様をここで殺せば俺も候補者に名乗りを挙げられるというものだ!!」
「俺を倒した程度で入れるほど、十将は甘くは無いと思うがな、そもそも俺はお前が言ったようにアレに加わるのは断ってるんだ、俺を倒したところで大した意味は無いだろう?」
「知ったことか!貴様は倭国十将への勧誘を受けている、なぜ断ったのかは知らないが、俺がお前を倒せば実力の証明が出来るのもまた事実!ここで果てろ赤鬼ぃぃ!!!!!」
狂喜した男は忍刀を抜くと辰月に襲いかかる、だが辰月もそれに応じ刀を抜くと居合切りの構えを取る。
「おおおおおおお!精霊の風撃!」
男は刀に風を纏わせ殺傷能力と切れ味を限界まで高めた男が持つ最強の一撃を、間違いなく渾身の力で放つ。
辰月の刀の唾がカチリとなる。
「鬼火・斬」
一閃
「ぐあああああああああ!!!」
横薙ぎに辰月の刀は炎を纏い男を切り捨てた。
「ば、バカな……」
男が倒れ伏せると同時に刀を鞘に戻す、それは正に刹那の出来事であった。
「辰月さん!」
一連の出来事を見ていた哲平が辰月の元に駆け寄る。
「すみません、僕…僕が言い出したことなのに何も出来なくて…」
「いんだよんな事、あいつは今のお前には荷が重いと思った、だから俺が切った、そんだけだ」
「辰月、哲平…」
よろよろとアルカが立ち上がる、その顔は気まずさからか2人を巻き込んでしまった罪悪感からか、泣きそうな顔をしている。
「アルカさん……」
「私…2人を巻き込んだ、危険な目に合わせた、2人は何も関係無いのに…ほんとに…ほんとにごめんなさい」
アルカの頬をポロポロと雫が伝っていく、それは自分の不甲斐なさや申し訳ないと思う気持ち、そして愛する弟までも無惨に殺されてしまった悔しさ、色々な思いが込み上げて耐えきれず溢れてしまったのだ。
「気にすんな、俺達は俺達のやりたいことをしただけだ、お前に感謝される様なことはしてねえよ」
「そうだよ、だからアルカさん、そんなに自分を責めないでよ」
「お前は何もしてないけどな」
「うぐ、それを言われると何も言い返せない…」
辰月達が他愛も無い話をしていると、忍び衆のリーダーの男がよろよろと立ち上がる。
どうやら斬られていたのは忍刀だけで、男本人は何とか助かっていたらしい。
「貴様…なぜ斬らなかった」
「お前にはまだやって貰いたいことがあるからだ、帰って上でふんぞり返ってるヤツに伝えな、服部アルカは坂本辰月が引き受ける、まだ何かちょっかい出したいなら俺の所に直接来いってな」
「辰月……」
顔色ひとつ変えずに言い放った辰月に、アルカは信じられないと言った様子で目を見開いている。
「貴様、伊賀を敵に回すと言うのか?」
「さてね、面倒臭いからもう飽きたなら来なくてもいいよ」
「チッ……いいか、次は絶対に貴様を始末する!この俺がだ、せいぜい次に合う時を楽しみに待っているんだな、俺の名は風磨耕太郎!この名、頭に叩き込んでおけ!」
風磨はそう言い捨てると、味方にも目もくれず一瞬で風と共に逃げ去っていってしまった。
後には辰月と哲平、そしてアルカだけが残る、アルカは終始気まずそうにしているが、それをこの赤髪が気にするはずもない。
「帰るぞお前ら、少し動いたからな、もっかい飯食ったら風呂屋行くぞ」
「わ…私!一緒には行けない…行ったらいずれまた迷惑かけちゃう…」
下を向いて震えるアルカに、辰月は溜め息をつくと、アルカの正面に立ちしゃがんで肩に手を置く。
「良いんだよ、何回でも何十回でも迷惑かけやがれ、そんなんに負けるほど、俺達はやわに見えるか?そんなんで文句言うほど、俺達が馬鹿に見えるか?ガキが難しいこと考えてんじゃねえよ、そんな遠慮なんか捨てて、全部任せるくらいの気持ちで乗っかって来やがれ」
『難しい事ばっか考えてんなよ』
アルカの脳裏に、殺されてしまった父のよく言っていた言葉が浮かぶ、アルカは少し泣きそうになり、それをぐっと堪え笑顔を作ると肩に乗っている辰月の手に触れる。
「ほんとに乗っかっちゃうよ?」
「何でもいいさ、これでお前が前に進めるんならな」
辰月の不器用ながらも優しい言い方にアルカはニヤニヤし、この人達について行こうと決めた。
父の面影を感じたのもある、しかしそれよりも、この男をもっと見ていたいと思ったのだ。
そして
満足そうに笑い握手する2人の後ろで、富田哲平は空気になっている。
「いい話だなぁ」
哲平はとても満足そうに空を仰ぎ見ていた。
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